近畿のあるお寺で開かれる骨董市で仏像と携帯用の小さな木箱に入ったお地蔵さんを買った。
今思えば何故そんなものを買おうと思ったのか分からないが、もしかしたら当時の私は、新しい環境になって気が弱まっていたので、何か心の支えになるものが欲しかったのかもしれない。
ともかくも少し骨董市でブラブラする。
そのうち、中国の武将のような勇ましい鬼神を模した木造の像と、小さな木箱に入ったお地蔵さんが目にとまって購入した。
家に持ち帰り、本棚の上にかざった。
異変は、それから起こるようになった。
部屋に安座させて数日が経ったある夜、寝ていると何か見られている気がする。
ん?と思って部屋を見渡すけれど、特に変わった様子もない。
おかしいなと思い、また眠りにつく。
そんなことが数日続いた。
ある日の夕方、仕事を早めに切り上げて帰宅してなんとなく鬼神像をみる。
すると夕陽に照らされたその鬼神像が何やらものすごく禍々しいオーラを発しているように思えた。
何というか、言葉にできないのだが、とにかく不気味というか・・・。
少し不安になってお地蔵さんの方も見た。
するとそのお地蔵さん、買う時には気がつかなかったような本当に物悲しい顔をしているように見えた。
なんとなくモヤモヤっとして鬼神像とお地蔵さんを押入れにしまった。
するとその夜、足を引っ張られた。
ちょうど足下に押入れがあるのだけど、寝ているとズズズっと自分の身体が引っ張られる夢をみた。
いや夢よりももっとリアルだった。
息苦しく、押入れのところが歪んでみえた。
鬼神像とお地蔵さんの姿はなかったのだけど、とにかく押入れの戸がググっとこう、らせん状に歪んで見えた。
さすがにこれはまずいと思って次の日の朝、押入れから取り出してみると、鬼神の顔の一部、わかりにくいところが焼けて溶けていることに気がついた。
なんで・・・。
なんで買う時に気がつかなかったのかと茫然とした。
そして、その鬼神とお地蔵さんをできるだけはやくお寺に納めることにした。
最初のお寺には断られ、その後とても親切なお寺が引き取ってくれることになった。
そこで連絡をとって快諾してくれたお坊さんがその2体を見ていった一言。
「これは、きもいな・・・。」
お坊さんってそういうものを信じないと聞いていたからこの一言を聞いたときにはさすがにゾっとした。
モノには魂が宿るというのは本当にあることなのかもしれないと思った。
だから仏像などは安易に骨董市なんかで購入するものじゃない。
納めてからはおかしな現象はパタリとやんだ。
たまにそのお坊さんへの感謝とともに思いだす、私のこわい話でした。
後から親に聞いた話。
昔、お坊さんっぽい格好の人が仏像系の骨董品をしばらく見て、突然手を合わせてお経?を唱えた後それを買っていったらしい。
骨董品として飾る場合仏像系のモノは魂抜きをしないといけないとか。
していない骨董屋の方が多いらしいね。