俺は夜中に散歩するのが好きなんだ。
見たことない場所を歩いてるのってなんとなくいいものじゃない?
あと健康にもよさげだし。
最初は家の近所を散歩してたけど、やっぱり飽きた。
家の近所の風景なんて変わるもんじゃないしな。
だから、車に乗って適当な場所に止めて散歩をするようにしたんだ。
そんなある日、俺はまた夜の散歩を楽しんでいた。
その日は河原に行ってた。
しばらく歩き回り、いい感じで汗もかいて車に戻ろうとした。
とぼとぼ河原を歩いてると、なんだか急に不安になってきた。
俺ってすげー怖がりなんだ。
怖がりなのに夜中の散歩とか矛盾してる感もあるけど・・・。
まあとにかく不安になって、後ろを振り向いて誰かいないか確認したのさ。
そしたら、いた。
黒く長い髪を振り乱した女が、こっちに向かって走ってきてた・・・。
口は何かぶつぶつ呟いてる。
俺は一瞬唖然とした後、全力でダッシュで逃げた。
半べそかきながら、ダッシュしつつ後ろを確認すると、追ってきてる。
俺も全力疾走で逃げつづけた。
車が見えてきた。
少し迷ったが、すぐ車に乗り込みエンジンをかけた。
発進するまでの間、女が車に何かしてくるんじゃないかと気が気でなかったが、どうにか車は発進することができた。
車を急発進させ、急いでその場を離れる俺。
バックミラーをびくびくしながらチラチラ覗き見るが、女はついてきていない。
少し安心しながら運転していると、前方にいた・・・。
髪を振り乱し、俺の向かっている方向と同方向に走っていた。
俺はまたしても半べそで、急いで女を抜き去った。
すると、前方から抜き去った筈の女がまた現れるんだ・・・。
そうして何度も女を抜き去っているうちに、家に着いた。
俺は大至急車を駐車し、速攻2階の自分の部屋に逃げ帰った。
着替えて即寝ようとしていると、外から足音が聞こえてくる。
よせばいいのに、自分のテリトリーに戻った安心感からか俺は外を覗いちまった。
あの女が家の前を走っていた。
左の路地から右の路地へ走っていき、見えなくなったかと思えばまた左から右へ走っていく。
何度も何度も・・・。
俺は布団をかぶって震えながら眠りについた。
その後変な事は別に起きてない。
ただそこにも2度と行ってない。