うちの娘が2才の頃、よく宙に目線を彷徨わせることがあった。
嫁さんと「赤ちゃんには見えるっていうよなw」なんて笑いながら「なにが見えるの?」と問いかけると「お友達」と娘。
「お友達なん?お名前は?」と、まだ余裕で訊く俺と嫁さん。
娘は無言でまたじっと宙の一点をみつめると、少しして「けいこさん」と答える。
テレビかなんかの影響かな?くらいにしか当時は思わず娘には架空のお友達「けいこさん」がいるというのが嫁と俺の共通認識となった。
で半年程して家の事情で他県に引っ越すこととなり娘もその頃にはあまり目線を宙に彷徨わせることもなく俺も嫁も「けいこさん」のことなどすっかり忘れていた。
娘が3才になる頃、職場の飲み会に(嫁と俺は同じ職場)娘もつれて行った時のこと。
猫には幽霊が見えるという話題から、ふと「けいこさん」を思い出し皆にその話をした。
面白がったパートのおばさん連中がうちの娘に「けいこさんはまだ見えるの」と訊くと「けいこさんはもうおらん」と娘「どこ行きよったんw」とからかうように訊くおばさん。
だが娘がぽつりと語った「けいこさん」の話にその場は凍りついた。
娘いわく「引っ越しの時に前の家にけいこさんはおいてきたいっしょにはこれなかったけいこさんは家にいたけどほんとうは石でできた橋のしたにいるおんなのひととしはわかんないけいこさんは橋の下でひとりぼっちだったから自分のところに来た」
そこまで語った娘は急に不機嫌になりその後の追求には「わからん」としか答えなくなった若いパートの女の子が重くなった雰囲気を変えようとしたのか努めて明るい声で「けいこさんみたいな人はもう見えんのん?」と娘に尋ねると娘はじっと座敷の隅を見つめて指差し「◯◯◯さん」と意味不明の名前を言った。
ますますその場は重くなり、飲み会は早々におひらきとなった。
この話をうちの母親にすると、母いわく「うちの家系の女は、見る」家系なんだ、気をつけなさい」とのこと。
そういえば母親が写真を撮ると必ず何枚かは原因不明の光線カブリがあった。
妹が突然「誰かきた」と言い出し、外を見ても誰もいないのに犬がけたたましく吠えることが時々あった。
家系なら仕方ないかとなんだか納得した。
娘も今は11才になり、おばけも虫も血も苦手な普通の小学生になってます。
当時のことは全く記憶にはないようです。