犯人扱いされてしまった話

カテゴリー「心霊・幽霊」

一時期常連だった模型屋の店長がえらい年寄りで、聞けば旧海軍で軍艦にも乗っていたとのこと。

「ああ、それでショーウィンドウにウォーターラインの軍艦が並んでるのね。」と思ってた。

その店長から聞いた話。
乗っていた戦艦が瀬戸内海に停泊していた時のこと。

真夜中、夜衛の当番なんで見まわり時間を待っていたら自分の前に見まわりに出ていった新兵がガタガタと駆け込んでくる。

何事かと思えば新兵震えながら「班長、出ました出ました!」と繰り返すばかり。

やっとのこと聞き出してみれば、三番砲塔に女が立っているという。
なにを馬鹿なことを言っているのかと思い、小銃を持って三番砲塔へ向かうが、特に異状なし。

何かの間違いだったのだろうと戻ろうとしたその時、背後からけたたましい笑い声が降りかかってきた。

驚いて降りかえると、三番砲塔の上に女が立っている。
真っ白な浴衣のような着物、真っ赤な洗い髪を振り乱し、大きな口を開けて笑っている。
角度から考えて、身長は3mはあろうかという怪物。

誰何する気も起きず、わっと叫ぶとまっしぐらに逃げた。

翌朝からひどい熱を出し、艦内医の手にも負えず呉の病院へ搬送された。
その日の正午過ぎに乗っていた戦艦は不審火で爆発、沈没してしまったとのこと。

「爆沈の当日に艦を降りてるから憲兵に目をつけられて、そっちの方が怖かった」と、店長は言っておりました。

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