これは私が母から聞いた話で真偽は確かめられませんが実話らしいです。
母方の祖母の家系の今から九十年位?の前の御先祖様の話です。
東北の田舎の有力な武家のおじ様は病気になり、殆ど寝たきりの状態だったにも関わらず離魂(りんこん)で近所に昼間から歩いている事もあったそうです。
※離魂(りんこん):夢遊病や幽体離脱のこと。
ある日、いつもの様に幽体離脱したおじ様は隣の家へ行き、台所を覗くとその家のお嫁さんが料理の真っ最中。
おじ様が「おい」と声をかけるとお嫁さんはおじ様を見て驚き「キャー!!」と叫び台所の隅にしゃがみ込み顔を着物の袖で隠しうずくまってしまいました。
その様子に内心喜んだおじ様もずっと怯えるお嫁さんにつまらなくなり「もう少し脅かしてやろう」と、傍にあった釜戸の釜をひっくり返して大きな音を立たせ更に脅かすと満足して家に戻って行きました。
それからおじ様の世話係の女中さんが目覚めてニコニコしているおじ様に「何か良い夢でも見ましたか?」と問うと、おじ様は「今、隣に行って嫁さんを脅かしてやった。ふふふ」と笑いました。
その女中さんはおじ様の傍に何時もお世話して、幽体離脱となって出歩いている噂も知っている物のそれを見た事はありません。
女中さんは気になって隣の家に真偽を確かめに行くと話の通りで、お嫁さんは震えながら「もう家に来ない様に行って下さい」と言ったそうです。
母はお母様からこの話を聞いた時、幼子心に「性格悪いな~」と思ったらしく、笑って話を締めくくりました。
生きていても離魂してそれが他の人からも見えると言うのは、にわかに信じがたい事だけど、本当に実際に昔にあった事だとすると興味深いとですね。