夢の中の女性の正体

カテゴリー「不思議体験」

小さい頃具合が悪くなると必ず同じ夢を見た。
昔から体力がなくて人ごみも暑さも苦手、遠足や運動会、祖父母の家に行った時なんかは熱こそ出ないものの頭痛腹痛嘔吐ですぐ寝込むような子供だった。

病院にいけば自家中毒と言われて毎回ブドウ糖の注射を打たれてた。
で、夜中に具合の悪さで目が覚めて吐き気と眠気で苦しんでると必ず見る夢があった。

夢の内容は何故か薄暗い倉庫の中のコンテナ?がある場所にいる。
目の前には黒髪で真っ赤なスーツを着た女性が俯いて立っている。
この時点で何故か「ヤバい、逃げなきゃ」と思っている。

女性はブツブツと何か言ってるんだけど、声は聞こえるのに何を話しているのかはわからない。
ちゃんと日本語で「凄く嫌なこと」を言ってるのはわかるんだけど、具体的に何を話してるのかがわからないんだ。

そのうち声が大きくなってきて女性がどんどんヒートアップしていく。
嫌で嫌で仕方なくて逃げたいのに固定カメラのように女性の胸から上をずっと見続けるしかなくて、益々具合も悪くなってくる。

女性が声を荒げるのと同時に俯いていた顔も上がってきて、髪の毛まで逆立つ。
ついに金切り声で何かを叫んだ時に、もう辛すぎるし怖いしで毎回泣いてしまうんだけど、また最初のシーンに戻って俯く女性がブツブツ何か言い始める。

しばらくこれがループ。

どうにか起き上がってからも、少しでも思い出すだけで女性が頭の中でブツブツ言い始めるから逃げられない。

泣きながら母に助けを求めてトイレで吐いてもしばらくあの光景が頭の中にあって、泣き続けてよく母を困らせた。

この夢?は大きくなるにつれて見る頻度は減ったけど、時々体調を崩すと不意打ちであらわれて、結局高校生になる辺りまで続いた。

で、そんなこともすっかり忘れた頃には相変わらず虚弱体質で立派な偏頭痛持ちの主婦(子持ち)になっていた。

暑い日でも子供は外に出たがるし、体調が悪くてもやらなきゃいけないことがたくさんある。
旦那は子供が産まれてから仕事が忙しくなりストレスで当たり散らすようになった時期があった。

家事も育児も追い付かず、寝込んでは子供に謝り、旦那の顔色を伺う日々に疲れて、偏頭痛で横になっていた時にふと「違う人生もあったのかな」と考えてしまった。

仕事が好きだったから、結婚しないで働いていられたらどうなっていたんだろうと。
我ながら最低だと思う。

そのまま人生を振り返ってるうちになんとなく小さい頃に「真っ赤なスポーツカーに乗って真っ赤なスーツを着て働きたい!」と何枚も同じ絵を描いていたのを思い出した。

そんなに小さいうちから結婚願望がなくて、キャリア思考?だったのかと・・・。
結婚も子育ても自分には向いてなかったのかもしれない。
流されるように結婚して、子供を産んで、振り返ってみたら自分の人生ってその場しのぎばっかりだったような気がする。

体調を崩すたびにそういう思いが強くなっていった。

それであの女性も思い出した。
あの女性は誰だったのか、何をあんなに怒鳴っていたのか。
いつも夢の中では顔が見えているのに、体調がよくなると忘れてしまうから誰だかわからない。

もしかして真っ赤なスーツを着ていたということは私の中で大人の象徴だったのかな、と納得しかけた時に今自分が黒髪のロングヘアだったことに気付いた。

ずっとショートカットか、伸ばしても茶髪だったのに出産を機に黒髪にして伸ばし始めたんだ。
よくよく考えてみたらあの女性の顔も、少し今の私に似ていたかもしれない。
本当に自分でも妄想が激しいとは思うんだけど・・・。
あれは今の自分からの恨み言だったのかもしれないと思った。

考えてるうちにゾッとした。

それからしばらくして旦那の仕事も落ち着いて、私も無理せず体調管理しながら育児や家事をこなせるようになってきて余裕が出て来た。
今では大変だけど結婚して良かったと思うし、我が子も素直に可愛いと思う。

ただたまに子供を叱っている時に、今の自分はあの女性みたいになっているんじゃないかと不安になる時がある。

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