ある夜、布団に入りウトウトしていた時、「起きてくださいますか」という女性の声が聞こえました。
私は目を開けませんでしたが、横になったままその声を聞きました。
「怖がらないで下さい。決してあなたに害を加える者ではありません。まず、怖がらないで、声を出さないでください。怖いなら怖いとおっしゃってください。お気持ちで怖いと思っていただければ私はお声をかけません」
その声の主は若い女性で高貴な教養ある人という感じでした。
恐怖心よりも先に、「せっかく寝ているのに起こされてしまったな」という確認作業が頭の中でされました。
「怖がらないで下さい」という声を、幽霊だとかお化けだとかと認識の前に、「ああ、夢だな。飲みすぎたかな」と思いました。
「怖がらないでください。そのまま、目を開けていただけますか」と声は続けます。
「目を開ければこの夢は覚めるな」と思いながら目を開けると、部屋の中に女性と思われる影がありました。
私が起き上がろうとすると、「そのままで結構です。私がわかりますか」と優しい声で尋ねられます。
恐怖感は全くありません。
「分かりますかとは、どこの誰なのか分かるかという意味なのだろうか」と私は考えました。
「いえいえ、私がどこの誰かをご存知かと言う意味ではありません。私がここに居るのがわかりますか?という意味ですから、深く考えていただかなくてもよろしいです。怖くなったら、声を出すかお心のなかで消えろと思っていただければ、私はお話できなくなりますから、心配しないで下さい」と女性は言います。
「まだまだ、変な夢を見ているなあ」という意識が私のものでした。
「私は○○と申します。既にお分かりのように、あなたの住んでいる世界の者ではございません。あなたからはあの世と言われる世界の者です。あなたにお願いがございます」と女性は話し始めました。
その女性は自分が庄屋といわれる豪農の娘であったこと、嫁に行ったこと、子供ができずに縁を切られたこと、その地のしきたりで国境の地に埋められて死んだこと、そしてそのことに恨みはないことを優しい声で話しました。
私の方はというと、「何故子供が生まれない身体だと縁を切られて、殺されてしまうのだろう。可哀想な話だ、実家に戻ればいいのに、そういうしきたりというのもあったのか」などと思って聞いていました。
「実家に戻ってはいけないというしきたりがあったのです」と女性は言います。
「日本にそんなしきたりがあった土地があったのだな」と私は思いました。
「7日間で結構です。私のことを思って祈ってくださいませんか。ロウソクと水と塩を、××神社に一度奉納し、それを私にいただけたらと思います」と女性は私に依頼をします。
××神社は私のよく知っている地元の神社でした。
「はい、それだけでいいのなら、承知しました」と心の中で思った時、女性は消えて行きました。
そして私は女性の言われる通りに、××神社に行き、供物を奉げ祈りました。
そして神社を後にしようとした時です。
神職:「ありがとうございました。○○というお名前をご存知でしょう」
私:「ええ、なんか変な夢を見てしまって、この神社にロウソクと水と塩を奉納するように頼まれ、その通りにしました。それだけですが、なぜその名前をご存知なのでしょうか」
神職:「○○はここの神社に祀られている神様のお使いの方ですよ。○○という名前は、その方が人間だった時のものです。近いうちにあなたがここに来るからお礼を伝えるようことづかっています」
長くなるので神職の方の話をまとめます。
もとよりこの神社は嫁に出て子供が生まれなく、実家にも帰れないで殺される風習があった時からある神社で、殺された嫁を供養するための祠を建ててあった場所らしい。
子供が欲しい人の願いを叶える神社として由来がある。
そういう中の一人が○○である。
あなたがこの神社で以前子供が欲しいと願った。
そのときに、あなたの願いを受けたのが○○である
やっと○○と私の関係が分かりました。
妻が流産を繰り返し医師から子供を諦めなさいと言われた時、私はこの神社で祈った事を思い出しました。
そして女の子を授かったのです。
○○が私に「お礼ぐらい言いなさいよ」という意味で出てこられたのかと訊くと、神職の方がおっしゃるには、「○○は神様のお使いで高貴な方なので、そうしたことは要求しません。」とのこと。
なぜロウソクと水と塩の奉納をお願いしに現れたのかは神職が聞いても○○は教えてくれなかったようです。
ただ奉納のお礼だけを伝えてくれ、ということらしいです。
なぜ○○が私に頼み事をしたのか、どういう意味があったのかは全く不明です。