これは、私が小学校低学年だった時に体験した話です。
ある夜の事、私は母と共に家でテレビを見ていました。
いつも通りの日常。
9時を過ぎたとき、母から「もう寝なさい」と言われました。
当時私は、夜が怖いと思っていました。
いや、寝るのが怖かったのです。
寝ると、夢を見ます。
その夢が怖くて怖くて、母の手を繋がないと落ち着きませんでした。
その日も同じ夢を見ました。
どこかわからないところで、私は独りぼっち。
そこに一匹の犬が居るのです。
私にはその犬が恐怖でならなかったのです。
理由はわかりません。
そして、どこからか「見てんじゃねぇよ・・・」と、聞こえるのです。
その声が聞こえたあと、犬が振り向こうとするときにいつも目を覚まします。
ですが、その日は違いました。
犬が振り向こうとするときに目が覚めないのです。
なぜか、私は顔を見たらいけないと思いました。
ですが、その思いとは逆に目を離せなかったのです。
そして、顔を見てしまったのです。
その犬は、人の顔をしていました。
男性のような、目が少し飛び出したような、とても恐ろしい顔をしていました。
私は怖くて動けませんでした。
そして、その犬が私を見ながら「見てんじゃねぇよ。見てんじゃねぇよ。見てんじゃねぇよ。見てんじゃねぇよ。見てんじゃねぇよ。」と、永遠に言ってくるのです。
私は怖くて、走り出しました。
ただただ、あの犬が見えない所へ逃げたかったのです。
見たこともない道を走っていると、私の家が見えたのです。
私は帰ってきたんだと思い、靴も脱がずに母のいる布団の中へ入りました。
母の手を握りながら私は目を瞑りました。
朝起きると、何事もなかったようにお母さんはご飯を作っていました。
私は母に「今日、怖い夢を見たぁ」と台所へ向かいました。
そして、あることに気づきました。
靴を履いたまま寝ていたのです。
今となっては、あれが夢なのか、現実だったのかはわかりません。