京○多○川駅そばのアパートの一階に俺は住んでいた。
広さの割には安いのだけが取り柄。
部屋に出入りするには南から北へ狭い通路を通る必要があるんだが、その通路の脇にいつ頃だか、コンクリートを割ってオレンジ色の大きなキノコが育っていた。
今風に言えば「ど根性キノコ」って感じ?
ある日、妙な夢を見た。
俺はアパートの外にいて、いつも外出するように歩いていた。
幽体離脱といっていいくらい景色がはっきりしている。
当然いつもの通路を通るんだが、その脇、キノコのある位置に“何か”が横たわっている。
間違いなく人間じゃない、しかも息も絶え絶えな風情だ。
膨らんだ腹が裂けて、似たような小さい連中が数匹顔をのぞかせてる。
小さい連中は元気よく青白く光り、大きいそいつは干からびかけてた。
次の日見てみると、そのキノコの表面に緑色のコケっぽいのが生えてたんだ。
俺は結局何もしなかったが、幾日か経ってそのキノコが根元付近からごっそり削られてた。
誰かに荒っぽく蹴られて削られたみたいな感じだった。
それ以降、似たような夢は見ることはなく、削られたキノコは復活して、以前にも増して大きくなっていた。
そのキノコは俺が出て行くまで生えていたが、どうなったかは知らん。
たぶん夢で助けを求めてきたんだろうな・・・。
で、俺が何もしてくれなかったんで他の住人に助けを呼んで、その人が手助けして“除去”したんだろう。
古い樹木に精霊とかが宿る話があるが、キノコにも宿るんだねぇ。
それも短時間で棲みつくなんてさ・・・