写真が一枚も撮れていない・・・

カテゴリー「不思議体験」

実際に体験した話。

3年前の春、某不動産会社に営業で入社した。
入社して少ししたら店舗も決まったんだけど、その土地のことを私はよく知らなかった。
だから配属決まって1か月くらいは道と物件を覚えるためにもとにかく物件を回りまくって、物件紹介に使う部屋の写真を撮りまくっていた。

その日は、ファミリータイプのマンションから15件ほどピックアップして物件確認に行ったんだけど、その中のひとつのマンションの203号室ですごく気持ち悪い体験をした。

203号室は先月から改装に入っていたから、鍵の所在の確認のためにもマンションに行く前に大家さんに連絡した。
そしたら、「改装は3日前に終わっていて、鍵も水道メーターのところに置いてある」と言うので、すぐに向かった。

マンションは確か8階建てくらいで、各フロアによって少しずつ部屋の間取りが違ってた。
1部屋ずつ写真撮らなくちゃいけないし、めんどくさいな・・・って思ったことを覚えてる。

203号室以外にも501号室、307号室が空いていて、いつもなら5階から降順に物件確認していくんだけど、なぜかこの日は、まず203号室に向かった。

水道メーターのところから鍵を出して、鍵穴に差し込む。
そこまでは何も感じなかったんだけど、鍵が開いてドアノブを引っ張った瞬間、すごく嫌な感じがした。

霊感とかないし、今までそんな体験もしたことないけど、帰りたくなるくらい・・・居心地が悪かった。
もちろん帰ることなんてできないので、とりあえず部屋の中に入った。
でも入った瞬間、は?ってなった。

大家さんに電話した時、「203号室は改装済み」って確かに言ってた。
それなのに、床はワックスが剥げてしまっているし、部屋の奥に踏み込むと畳も変えられておらず古いまま・・・。
押入れの襖もタバコのせいか少し黄ばんでいたし、どうみても未改装だった。

そのまま帰っても良かったんだけど、もしかしたら物件のサンプルに使えるかもしれないし写真を撮ることにした。

和室とリビング、風呂とトイレの写真を数枚撮って、残されたのは洋室2部屋。
両方ともドアがぴったりと閉まっていてすごく嫌だった。

まず、手前右側の部屋に入ったんだけど、その部屋は何だかすごく寂しそうな感じだった。
窓から全く光が入っていなくて、暗かったからかもしれない。
写真撮ってすぐに部屋を出た。
残すは左側の洋室だけで、部屋に入ると右側とは違って、夕焼けが差し込んでいて明るかったから、すごくほっとしていた。
でも、少し様子がおかしいのは、板張りの床に黒い何かがポツポツと垂れていて染みになってたことだ。

なんだろうって思ったけど、そのときはそれだけだった。
四方から内観を撮り、最後にクローゼットの中を撮影する。
案の定、この部屋のクローゼットもしっかり閉まってあったから、何の躊躇もなしに開けた。
けど、すぐに開けたことを後悔した・・・。

クローゼットの壁に酸化した血のようなあとがべったりと、大きく広がってたんだ。
釘付けになってしまっていた私は、数秒たって我に返り、すぐ目を床へと反らした。
けれど、クローゼットの床にも血だまりのような染みができていたのだ。
夕焼けのせいで赤黒く光っているように見え、口から「ひっ」と、声が漏れてしまった。

すぐに部屋を飛び出して、鍵を閉め、一目散に店へと戻った。
背中には焦りのせいか、冷や汗が伝ってた。

店についたころには気分も落ち着いていて、いつものようにデジカメのデータをパソコンへと取り込む作業に移った。

そのまま帰ってしまったので7,8件しか回れていなかったが、一件につき10枚以上の写真を撮っていたので100枚以上のデータが入っているはずだった。

でもおかしなことに、90枚程度しかない・・・。

どれだけ探しても、203号室で撮ったはずの写真が一枚もカメラの中に残っていなかった。

次の日、先輩についてきてもらって、もう1度203号室に行ったんだけど、そこには、3日前から既に人が住んでいた。
もちろん水道メーターに鍵なんかない。

大家さんに電話をすると私から電話なんてなかったと言われた。
確認済みのメモだって私の手元には残ってたのに、認めてはくれなかった。

あの203号室は一体なんだったのか、今でもわからない・・・。

後日談だけど、前に入居していた夫婦が夜逃げ同然で出て行ってるらしい。
それが何か関係してるのかなって勝手に思ってるけど、事実はわからない。

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