俺が中学までいた田舎には、漫画の中でしか出てこないような不良が未だに生息しててね。
ボンタン、短ラン、エナメルベルト、ツッパリ上等リーゼント、超薄い学生カバンと、身を固めるアイテムも1世代前。
しかしなんというか、どこか憎めない連中だったんだ。
地域密着型というか、地元の人も、「おうガキども、タコヤキ作りすぎたから食っていけ!」
「おう、ゴチになるぜオッサン!」
みたいな感じで交流してるというか、ちゃんとスジの通ってる連中だったんだよ。
ある日、そんな不良グループが、通学路の小道(近道の1つ)に集まって通せんぼしている。
ウンコ座りしてる連中が、その道を通ろうとしている下級生とかにガンを飛ばして遠回りさせていた。
その中にクラスメイトがいたんで、「え、この先でケンカでもしてるの?」と尋ねると、首を横に振られた。
「Aさん(上級生で、不良グループのリーダーやってる人)が、ここ誰も通すなって。あぶねーからって」
「なんかAさんがB爺さん(ウチの中学で教頭もしている住職)呼んでるってよ」
そう言うクラスメイトや不良たちは、少しビビってる感じ。
確かにこの小道では、子供が側溝に落ちて頭を怪我したりと、ここ最近小さな事故が頻発していた。
そうこうしてると、B爺さんを連れたAさんがやって来た。
リーゼントの不良と坊さん姿の年寄りの組合せは、なんとも奇妙だった。
その2人だけで小道に入ると、B爺さんの「成る程なぁ」という声が聞こえ、続けて読経が始まった。
かなりの時間が過ぎて2人が小道から出てくると、Aさんが「もういいぞ」と不良グループを解散させる。
B爺さんもAさんに、「わざわざスマンかったな」と声をかけて帰っていった。
それから不思議とその小道で事故は起きなくなったが、B爺さんがマメに足を運んで読経し、お供え物を上げていた。
10年経って、そのときのクラスメイトに話を聞いたんだけど、Aさん高校受験に失敗してB爺さんの寺で世話になったあと、県外にある同門の寺へ修行しにいったらしい。
クラスメイトは「あのAさんがなぁ」と言ってたが、俺はなんとなくピッタリだと思った。