俺の友達が体験した、ちょっと怖い話を書きます。
俺のじいちゃん、寺関係の仕事してて霊感あるんよ。
俺がガキの頃よくじいちゃんが「取り憑かれた時の対処法とか」「立ち寄ってはいけない場所の判断の仕方」とか色々教わって育ったお陰で、じいちゃんレベルとまではいかないけど、それなりに霊感が培われて育った。
親父はそういうのはぜんぜん分からんっていうんだけど・・・。
で、あれはたぶん5・6年前。
すまん記憶が曖昧で覚えてないんだが、とにかく俺の悪友と一緒に、K県の某廃病院(地元の人なら分かるかも)に行ったんだよね、
俺と悪友と、あとその地元でナンパしたJS三人と肝試し。
やっぱ女って怖がりだから、一人が帰るって言い出すと続けて他の二人も帰りたいって言い出すんだよね。
で、そこで悪友、仮にKとしとこう。
Kが俺らはこのまま進むから、帰りたければそのまま山降りて帰りなよって言ってそのまま一人で病院の壊されたドアから進んでいったんよ。
俺は女の子達がかわいそうだったからその一人に「大丈夫?車あいつのだから、あいつがいないと帰れないんだよ、俺で良ければ町まで一緒に山降りよっか?」って聞いたんよ。
ナンパした娘達は嫌だの、怖いだの暑いだのしばらく騒いでいたんだが、ある一人が突然静かに、「それより・・・ねえ、なんであの人たちずっとこっち見てんの?」って呟きだした。
え?どれ?って娘が見てる方向を俺も見てみたら、2、3人の人影がずっと、病院の上の階の窓から見てるのが分かったんよ。
暗くてよく見えないけど、月の光なのか、青白い顔がかすかに動いているのが分かる。
俺はその時、じいちゃんの教えをいまさらになって思い出し、急いでKに「K!引き返せ!!」って叫んだんだが・・・反応がない・・・。
俺はこれはただ事じゃなくなる予感がして、Kがめちゃくちゃ心配になった。
俺は娘たちを残しKを追う為にダッシュで入り口に入りかけて、やっぱり引き返しナンパした娘達に懐中電灯を渡した。
俺:「これはお前らが持ってろよ。俺はあいつを戻してくる」
女の子「え・・・でも・・・」
俺:「大丈夫、俺、コレやってっから」
そういって俺は軽くシャドーをして気合を溜めた後、また入り口に向かって走り出した
女の子:「・・・気をつけてね・・・」
俺は振り返りながら軽く親指をたてて見せ、あの娘達に声をかけた。
俺:「もしそっちがやばくなったら、とにかく大声で叫んで、俺すぐ駆けつけっから」
女の子:「うん」
そういって、俺はKの後を追った。
まずは一階、大声で叫んでKを呼び寄せてもいいんだが、あの人影達に居場所を知らせるようで気が進まなかった。
携帯の照明を思いっきり壁や地面に近づけて恐る恐るあいつを探し続けて5分くらいたって、散乱したカルテなんかがある部屋に入ろうとした時、上の方から人の声がした。
Kと、あと誰か別の声・・・?
俺は静かなこの部屋の中ならなんとか聞こえるかもしれないと思い、体の動きを止めて全力で天井に向かって耳を立てた。
「て・・・くだ・・・い」
「・・・る・・・してくだ・・・い」
・・・ゆるしてください?
うまく聞き取れなかったが、たぶんそんな事を言ってたと思う。
なんか、Kが取り憑かれたようににずっと謝罪をし続けている・・・。
俺はこのままじゃ危ない!と、今までの経験からして悪い前兆だと即座に解かった。
俺:「K!そいつの言う事を聞くな!!!何も答えず、今すぐそこから抜け出せ!俺がついとる!!」
そう叫び、ダッシュで上の階へと急いだ。
俺:「俺がついとるぞ!!」
自分に気合を入れる為に叫びながら3階のある部屋に行くと・・・そこには―Kの変わり果てた姿があった・・・。
Kは衣服を身に着けておらず、全身裸を晒した状態で背を曲げて立っていた。
さらに、その周りを5人くらいの人影に囲まれていた。
体格が良くこの部屋だけ妙に香水臭い・・・。
「おいこっちこい」
男達の一人に呼ばれた俺は、おとなしくKの隣に立った。
Kは小さな声で泣いていた。
ここから、囲んでいる男の一人と俺との問答か続く。
「肝試し?」
俺:「・・・はい」
おっさん:「年は?」
俺:「・・・20です」
おっさん:「ふーん・・・」
おっさん:「あのさ、ここ私有地」
俺:「はい?」
おっさん:「私有地だよばか、お前ら勝手に俺の土地に入ってんだよ」
俺:「・・・」
おっさん:「メンバーこれだけ?他はあと何人」
俺:「ぼく達だけです」
おっさん:「外のは?」
俺:「外のは・・・友達です」
おっさん:「二人じゃねーじゃねーか」
俺:「・・・」
俺に質問しているおっさんは「ちょっと見てきて」と呟くと、他の男達は全員階段を降り外へ向かった。
おっさんがタバコを出して一服していると、外からの懐中電灯のかすかな光が天井に当たった。
俺の渡しておいたやつだろうか・・・。
わずかにおっさん達の声と、それに答えるあの子達の声がが聞こえてくる。
懐中電灯の光が消えた頃、ほんの少し騒ぎの声が聞こえて、Kのとは違う、別の車のエンジンの掛かる音が聞こえた。
おっさんの携帯が鳴った。
おっさん:「あー、あー分かった」
携帯はすぐ切られた。
おっさん:「サイフだせ」
俺とKはこうなるだろうなと既に諦めていたのか、二人とも迷うことなくサイフを取り出しおっさんに渡した。
おっさんはサイフをじっくり物色し、免許証だけ取ると、サイフを俺達に返した
「ほんとはお前達も乗せてきたいんだけど、お前らは見逃してやるよ」
俺達はその言葉を聞き、涙が出てきた。
こういってはなんだが、純粋に嬉しかったのだ。
俺:「あっありがとうございます!」
K:「ありがとうございます!」
俺:「すみませんでした!」
K:「すみませんでした!!」
おっさんは俺達の声には無表情に答え、部屋を後にし、しばらく静寂が部屋を包んだ後、車が砂利道を走る音と共に去っていった。
窓からは、砂利で揺れるワゴンが走り去っていくのが見えた。
その後、俺は親父にこのことを話すと、「馬鹿もん!なぜあそこに入った!!」と顔を真っ赤にして怒られた。
なんでもあそこは何年か前から、何も知らない一般人を相手にヤクザがユスリをかけたり時には人を拐うなんてことをしているという噂があるらしい。
親父は「金とかは盗られてないか?誰か、友達とかは被害に遭ってないだろうな・・・?」と心配そうに尋ねてきた。
俺は、父親の不安そうな顔を見て「大丈夫、何もされずに見逃してくれたよ」と答えた。