爪で引っ掻いた傷が無数

カテゴリー「日常に潜む恐怖」

以前付き合っていた彼女の家に交際一週間目で初めて行った時の事。

明け方に行ったのだけど、寝ようとしたら部屋の角に置いてあった観葉植物に異変を感じた。
そこには青白いような透けた女の人が立っていて犬掻きみたいに手を交互にバタバタさせていたから。

そんな体験をした事なかったから、「あれ?あそこに女の人が見える!」と思わず言ってしまったら彼女が尋常じゃないほど怯えた。

事情を聞くと、2週間前に三階でガス器具の欠陥でカップルが亡くなったらしい。
彼女はその時真下の二階に住んでいて同じ間取りだったから、テレビニュースの取材を受けていたりしたそうで、なんか怖いから一階の部屋に移してもらったばかりの時に俺と交際を開始して、俺が部屋に行ったというワケ。

青白い女の人が亡くなったカップルの女の人かは分からないのだけど・・・。

後日、遺体の第一発見者がカップルの男の人が勤務していた会社の社長という事が分かり、偶然俺の知り合いだったので俺の不思議な体験を話したらその時の様子を教えてくれた。

亡くなったカップルの部屋は寮だったそうで、真面目に勤務していたカップルの男の人が連絡も無しで休んだので不審に思って部屋に様子を見に行った。

合鍵でドアを開けたら玄関にマネキンが横たわっていた。
いや、実はこの社長、恐ろしい近眼で、マネキンらしい物体が横たわっている程度に感じてそのまま部屋の奥に進んだらしい。

部屋に入ろうとしたら手前の風呂場から水の流れる音がする。
声を掛けたが返事はない。

「おい!開けるぞ?いいか?」

ドアをそっと開けると、カップルの男の人が既に亡くなった状態で倒れていた。

慌てた社長は気が動転して外に飛び出ようとしたのだけど、マネキンにつまづいて転んだらしい。

起き上がろうとしてマネキンをどけようとしたら、それはカップルの女の人の亡骸だった。

彼女は彼の異変に気が付きドアの外に助けを求めようとしたのか、這って玄関まで行ったはいいのだけど、自らも一酸化炭素に殺られてしまっていたらしく、力尽きたというのが警察の見解。

玄関のドアには彼女がもがいて爪で引っ掻いた傷が無数についていて、爪が何本か折れていた。
あの青白い女の人は亡くなった女の人だったのかなあ・・・。

神奈川県での話です。

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