ねずみの生き血を入れた

カテゴリー「怨念・呪い」

前の会社にいた時のこと。
後輩のA君が、同僚のBを好きだとわかった。
調査してみたらBもAくんが好きらしい。
これは話が早い!と思ったのだが、本気で好きになってしまうとあんなものなのだろうか・・・。

ふたりともモジモジして一向に話が進展しない。
仕方がないので、Bの同僚のC子と俺で世話を焼き、飲みに誘ったりして無事にくっつけた。

それから1年後のこと。

その会社では半年に1度ぐらいのペースでパソコンを新しくする。
貧乏会社なので4~5台程度購入し、現場レベルのトップに支給される。
で、そいつらが今まで使っていたパソコンは下のスタッフへ、下が使っていたパソコンは廃棄、という具合になるわけだ。
ま、パソコンのお下がりだね。

貧乏会社でシステム部なんてご大層なものはないので、自分でデータをバックアップし、メーラーなどの設定を保存してから、データと設定を削除し、パソコンを次の人に引き渡す。
受け取った方は自分の設定をしてデータを入れる。
アプリを入れるのが面倒なので、フォーマットはしないで済ませるのだ。

俺の直属の部下であり、お古のパソコンを受け取った新入りのD君が神妙な顔で相談に来た。

D君:「あの、すみません○○さん(←俺の名前)、ちょっとこれを見ていただきたいんですが・・・」

そう言ってお古のノートパソコンを差し出す。

画面を見てみるとフォルダが開いていて、その真ん中に「日記」と書かれたテキストファイルがポツンと。

俺:「何これ?君の日記を俺に見て欲しいの?」

D君:「いや、パソコンに入っていたんですけど・・・」

そのファイルはシステムフォルダの奥の奥、普通なら絶対開けないな所に入っていた。
D君がどうやってそれを見つけたのかは面倒なので省く。(ファイル検索でたまたま見つけたらしい)

俺:「中身見たの?」

D君:「さわりだけ・・・」

俺:「わかった。じゃあこれはオレが何とかする。君は忘れるように」

ファイルをコピーした後、削除してからパソコンをD君に返した。
彼の前にこのパソコンを使っていたのはC子、つまり日記は彼女のもの。
どうやら彼女は削除をし忘れてしまったらしい。
どんな日記なのか興味があるではないか。

最初は実に他愛のない内容だった。
仕事がうまくいっただの、取引先の誰々がむかつくといったもの、ランチがおいしい店を発見したとかね。
だが、ある頃から内容が一変する。

『私の方がBよりもずっとずっとA君を好きなのに・・・』

はぁ?A君が好きぃ?ってお前、俺と一緒になってA君とBをくっ付けたじゃねえか。

『B君がCを好きだと知って、言うに言えなくなってしまった・・・』

切ない乙女心も綴ってあった。
ちょっと同情した。
が、そのうち内容がかなりヤバイ方向に。

『BからA君と結ばれたことを聞かされた。あんなくそ女のくされマ○コに入ったクソチ○コなんて、腐って落ちてしまえ。阿部定の呪いをこめて』(ほぼ原文ママ。伏字はしてありませんでした)

こぇぇぇぇぇ・・・
※【阿部定(あべさだ):性交中に愛人の男性を扼殺し、局部を切り取った女】

しかし、C子もよく阿部定なんて知ってるな・・・。

そして最後の日記。

『A君もBも死んでしまえ。ふたりをくっ付けた○○(俺の名前)も、ふたりを祝福している会社の連中も死んでしまえ。みんなに呪いがかかるよう、会社のコーヒーメーカーにねずみの生き血を入れた。これからずっと続ける』

そういえば、この日記のころから、コーヒーにうるさい社長が「コーヒー豆を変えたか?」とか「入れ方を変えたか?」「水を・・・」と言い出したのを思い出した。

ちなみに俺はコーヒーを飲まない(飲めない)。
どうやってねずみの生き血を手に入れたのかは知らないが、彼女はやる・・・きっとやる。

上司に相談するとか、匿名でC子に警告するとか、いろいろ考えたが、どれもすぐに俺だと分かるだろう。
どうしようもないまま数日が過ぎた。

社長との会議中、また「コーヒーの味が・・・」と言い出したのでコーヒーメーカーを変え、置き場所を湿っぽい給湯室から総務の机の隣に変えることを提案。
あっさり了承したので、この問題は解決した。

まさかみんながいる所で生き血を入れることはできないだろう。
一月もしないうち、俺はより条件のいい別の会社からオファーがあり、そこに移った。
A君やBもほどなくして辞めたそうだ。

それからさらに1年後、会社を辞めた連中で飲むことになった。
A君も来た。
今ならC子がA君を好きだったこと、それを日記に残していたこと(もちろんコーヒーメーカーや阿部定のことは伏せて)を話してもまあいいだろう・・・と思った。

俺:「よっA、久しぶり」

A君:「○○さん久しぶりです」

俺:「元気にしてる?」

A君:「何とか。仕事が忙しいですけど」

俺:「それはいいことじゃん。そうそう、あのさ、Aに言おうと思ってたことがあるんだけど・・・」

A君:「何ですか?実は僕も報告することがあるんですよ」

俺:「何?」

A君:「実は俺、C子と結婚したんです」

俺:「えっ、ま、マジで。それはおめでとう・・・」

もちろん日記のことなど言い出せず、なぜBと別れてC子と結婚することになったのも聞きだせず、ただ女の執念は恐ろしいと思いました。

ふたりは今も幸せに暮らしているそうです。

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