3年前くらいだったか。
当時車の免許を取ったばかりでドライブが大好きだったんだよ。
その時はフリーターだったから深夜にドライブが多かったんだよな。
俺は三重住みなんだが青山高原って聞いたことあるかな?
そこの山の頂上に風力発電の風車を真近で見れるスポットがあるって聞いたから行ってみたんだよ。
でも後から知ったんだよな。
そこが三重県でもかなり有名な心霊スポットだって。
俺は12時頃にそこに連れと2人で行ったんだよ。
行きはよかった。
何もなく頂上まで行って風車と夜景をみたんだ。
野郎2人で。
そして帰りだ。
夏場で陽が登るのが早かったから空がうっすら紺色に明るくなりつつあった。
フリーターだったから昼夜逆転してたんだが、片道50キロくらいあるから流石に疲れてきてたんだよ。
だから山道にもかかわらず結構飛ばしてたんだ。
そしたら俺の車の前をちんたら走ってる車がいた。
その車は軽自動車だった。
真っ赤な軽だ。
車種はわからん。
当時は疎かったから。
そいつのケツを追って走ってたんだが遅いのな。
いや、法廷速度丁度だがやはり邪魔でイライラしてた。
でも当時は免許取ったばかりで煽るとか追い越しとか怖くて出来なかったから仕方なくゆっくりついていった。
車間距離は無意識に詰めてたな。
その時なんとなく俺は違和感を覚えたんだ。
結構嫌な感じの。
みんなたまに無いかな?
運転中に前の車の運転手とミラー越しに目が合うっていうことを。
なんとなく気持ち悪いよな。
それがあったんだよ。
前を走ってる赤い軽とばっちり目が合った。
陽が上がり始めてたからな。
それで見やすかったのもある。
ただおかしいことがあるんだよ。
俺だって走行中にルームミラーで後方確認はする。
みんなもするだろ?チラッと。
そいつは違ったんだよ。
どんなやつかは見た目でなんとなく分かったんだが、ロングヘアの女だった。
年齢はわからん。
違ったのは行動だ。
その女は運転中にもかかわらず、俺と目が合ったまま視線をこっちに向けたままなんだよ。
つまりミラーを見続けてるんだ。
ビビった。
ちょっとおかしい人なのかな?とか。
俺も何年か運転すればあんな妙技を会得できるようになるのかな?とか考えた。
でもさらにおかしい事があった。
その赤い軽は改造してたらしく、軽にしてはサイドミラーがデカかった。
おかしな事っていうのは、そのサイドミラーからも視線を感じたんだ。
そちらに目をやると、やはり目が合った。
しかもサイドミラーの人物はあきらかに男だった。
マジでビビった。
だって両方ともこっちずっと見てるんだからな。
さすがにやばいと感じた。
霊的なものでなくてもやばい奴に決まってる。
俺は赤い軽を先にいかせて山中の唯一のコンビニに車を入れた。
ちなみに連れは寝てる。
ひとまずトイレ休憩でもしようと俺はコンビニに入ったんだ。
15分くらい居ただろうか?もう良いだろうと、寝ている連れを早く帰してやろうと車を出した。
さすがにね。
いくら速度が遅いといえどもうだいぶ先に行ってるに違いない。
安心した俺はコンビニで買ったミルクティーを飲みながら鼻歌交じりに運転する。
そしたら連れが起きた。
連れ:「さっきコンビニよったろ~?(寝ぼけ半分で)俺にはなんもないのか~?」
もちろん買ってあった。
俺:「後ろにあるから勝手にとれ」
俺は後部座席にある袋を指差した。
連れは山道にも臆することなくシートベルトを外し、後部座席に身を乗り出す。
ガサガサガ・・サ・・ガ・・・。
袋をいじる連れの手が止まるのが分かった。
俺:「どうした?」
連れ:「いやいや、さっきからさ・・・・・
連れ:「さっきから・・・・後ろの車・・・めっちゃ近いんだけど・・・・・」
嫌な予感はした。
いや、予感がする前には反射的にミラーを見て後方確認をしていた。
正確には確認しながら嫌な予感がしてたんだな。
そこにはすごい形相で詰め寄ってくる赤い軽に乗ったロングヘアの女がいた。
「ひえぃあぁあああああ!!!」
俺は言葉にならないような悲鳴をあげてしまった。
連れは長い付き合いだから尋常じゃない事にすぐ気がついてくれた。
「とばせ!!!はよぅ!!!踏み込め!!!」
友人の怒号が車内に響いた。
俺は山道だろうが飛ばしまくった!
向こうも飛ばしてきた。
鬼の形相とはこのことだ。
とにかく怖い・・・。
ただ幸いなことにこちらの方が馬力があったため差はぐんぐん開いていった。
しばらくすると、ふもとに降りた。
すっかり陽はあがっていた。
連れと2人で「もうあの山はやめとこう」と約束した。
その後この話を知り合いにしたら「俺も見たことある。昔無理に山道で追い越しして事故死した人の霊じゃないかって地元では話があるらしいな」と。