私が中学生の時の話です。
私は三人兄弟ですが、子供部屋は二部屋しか無く、二階の一部屋は一番上の兄が、一階の部屋は次男の私と末っ子の妹が使ってました。
兄が高校を卒業して、部屋が空いたので私が使う事になったのですが、部屋を使い始めて一ヶ月くらい経った頃から夜、かすかに階段を上がる音がして、確認しても誰もいなかったり、誰もいないのに誰かの視線を感じたり・・・。
さらに夜中に目を覚ますと、窓際がボゥっと緑色に光ってたり・・・というような現象がたまに起こるようになりました。
それでも、特に怖いという感じはしなかったのと、変に大騒ぎしたくなかったので家族には黙っていました。
しかしある時、寝ようと布団に入ってまもなく金縛りになり、その直後、部屋の入り口から誰かが入って来たのです。
といっても気配だけで姿はみえません。
しかし何故か女性だという事だけは直感で分かりました。
その女性は私の横まで移動し、恐らく私を見下ろすような位置に立ち「ただいま」と、はっきり聞こえる声で言ったのです。
次の瞬間金縛りは解けました・・・。
そのまま眠れぬままに夜を明かし、翌朝両親にその事を言うと父親は知らなかったようですが、母は二階の部屋でおかしな事が起こるのを薄々知っているようでした。
そこで話を聞いてみると、実は兄が使っていた時も同じような事があったとの事でした。
しかし兄の時は年に一、二度おかしな事があったようですが、兄自身も気のせいかどうか分からなかったのと、特にすごく怖い思いもした事がなかったので私には言わなかったそうです。
しかし、さすがに幽霊?が出るとはっきりした以上、そのまま部屋を使う気にもなれないし、この先何があるかわからないので父が菩提寺に行って相談したところ、その住職の知り合いで、その手の問題を今まで何度も解決した経験のある人を紹介してもらいました。
その人は農家を営んでいる人で、プロの霊能者ではありませんが、時々ボランティアで、こういった相談に乗っているとの事でした。
その週末、その人が家に来て、私の部屋の前まで来た途端「ははぁ、あれだな」と言うと、私の部屋の前の廊下を挟んで斜め前の壁にかかってる木彫りを手に取りました。
それは、欧米人の女性の顔が掘ってある木彫りのオブジェのようなもので、父と母が新婚旅行でイギリスに行った時に買ってきたものです。
その人は「おそらく原因はこの木彫りだと思うので、しばらく預からせてもらいたいのだけど」と言うので、それで変な現象が収まれば何も言う事はないので預かってもらう事にしました。
そして他の部屋と家の周囲を一通り見て帰っていきました。
一ヶ月ほど経って、その霊能者の人から連絡があり、話したい事があるから家に来て欲しいというので母と私とで行きました。
霊能者の人の家につくと、預かってもらってた木彫りのオブジェを出してきてて「もう大丈夫です、この木彫りに憑いてた霊は成仏しました、安心なさって結構です」と笑って言いました。
詳しく話を聞いてみると、元々この木彫り自体には特に因縁はなく、たまたま、女性の霊が憑いただけという事でした。
むしろ問題は私の家がある周辺の土地に因縁のある霊らしく、周辺の土地は、戦後しばらくまで女郎屋が立ち並ぶ歓楽街で、その女性の霊は生前は遊女であり、若くして病気でなくなった人だという事でした。
とくに悪い霊ではなかったそうです。
ただし家の周囲の土地には、似たような境遇の霊がわりと多いようなので、このオブジェのように人の顔をしたものや人物のポスターなどを室内においたり貼ったりしないほうがいいとアドバイスされました。
そういうものに霊は憑きやすいそうです。
オブジェの方は持っていても構わないとの事でしたが、気になるなら処分もしてくれるとの事だったのでお願いして帰りました。
その後、奇妙な現象は一切なくなり、私が家を出た後は妹が使っていますが、現在まで、特に問題はないそうです。
以上が、私の唯一の霊体験です。