パワーストーンと夢(前編)

カテゴリー「怨念・呪い」

※このお話には【パワーストーンと夢(後編)】があります。

7~8年前、自分はパワーストーンにはまっていて色々集めていました。

集めてた理由は別に不思議な効果を期待したりではなくて、単純にキレイだから。
男のくせにキラキラしたものが好きで、でも当時社会人になったばかりの自分には高価な宝石なんて到底手が出ないので、安価なパワーストーンに流れたわけです。
一度集め始めると熱が入るもので、気がつけばちょっとしたコレクションと言えるくらいに色んな石を集めていました。

ある日、某ネットオークションで掘り出し物を探していた時、黒い卵形の石を発見。
ラブラドライトのエッグで、縦10cmくらいの大きさ。
ラブラドライトは自分も何点か持っていましたが、紹介写真のそれはそのどれよりも綺麗で神秘的な光を放っているように見えました。

・・・・・・欲しい。
凄く欲しい。

何故か異様に惹き付けられ、価格を見ると意外なことに即決で破格の値段設定。
ほとんど捨て値と言ってもいいくらいで「こんなにグレード高そうなのに・・・」と首を傾げました。

同じ石でもグレードで価格もピンキリですが、どう見ても最高級の逸品にしか見えないのに。
出品者の説明を見ると海外旅行の際に買ったものということで、「一度人の手に渡ったものだからこのくらい安くないと売れないのかも・・・」と納得しました。

ことパワーストーンに関しては、他人のお古なんて絶対NGという人もいますが、私はそういうのは全然気にしない性分だったので、すぐに落札しました。

程なくして、その石が届きました。
丁寧に梱包されていて、写真で見たとおり凄く綺麗なラブラドライト。
あまりに安かったのでもしかすると写真とは別の安物が送られてきたり?と
一抹の不安もありましたが、間違いなく写真の石でした。
良い買い物をしたと上機嫌で出品者にお礼を言おうとネットにアクセスすると、何故か出品者の登録情報が削除されていました。

そのラブラドライトは見れば見るほど美しく、その青白い輝きを見ていると何ともいえない恍惚感を感じ、その日はその石を握り締めて眠りました。

その夜、妙な夢を見たのです。

どこかの薄暗い森の中、私は1本の大きな木に縛り付けられていて、目の前には小さな子供達が10人ほど立っています。
全員黒髪で肌は浅黒く、半裸に近い服装。
まるでどこかの先住民のよう。
その子達が一様に私を指差して、

子達:「ナール、ナーシュ」

そう繰り返すのです。

ナーシュ・・・・・・?

意味が分からず呆然としていると、自分の頭上で”ズルズルッ”と何かが動くような気配。
何か大きなものが、私が括りつけられている木の上にいる。
しかし確認しようにも首が動かず、上を向けない。
目の前では子供達が変わらず「ナール、ナーシュ」と繰り返しています。
よく見ると子供達は全員無表情で、まるで生気を感じない・・・。
急に恐ろしくなった私は無我夢中で身をよじって逃げようとして目を覚ましました。

息が荒く、全身汗でびっしょり。
心臓が激しく鳴っていました。
時計を見るともう朝。
そこでさっきのが夢だったと理解して安堵。

シャワーでも浴びようと二階の寝室から一階へ降りると先に起きていた姉と遭遇。

私:「おはよう」

姉:「おはよ。なにそれ。目、どうしたの」

私:「目?」

言われて鏡を見ると、右目が真っ赤に充血していました。

それから数日、私は頻繁にこの奇妙な夢を見るようになりました。

縛られた私・・・。
「ナール、ナーシュ」と呟く子供たち。

木の上にいる何か。
その度に汗だくになって飛び起き、夢だったと安堵する。
何か重要な意味があるのかもしれない・・・・・・最初こそ然程気にしなかったものの、こう続けて同じ夢を見ると、ただの夢だと片付けることも出来なくなってきました。

そしてこの夢を見た後は、必ず右目が充血しているのです。
思えば、夢を見るようになったのは、例の黒い石を購入してから。
あの石に何か関係があるのかも、と思うようになりました。

購入してからというもの、私はあの黒い石を常に持ち歩いていました。
見つめると不思議な恍惚感に囚われ、片時も手放したくなかったのです。
外出する時はポケットに。
入浴の時は一緒に持ち込み、眠る時も手に持って。
文字通り肌身離さず大切にしており、今思えば少し異常なほどだったと思います。

けど、夢のことを考えると何だか不気味にも思えてきて。
居間でテーブルの上にその石を置いてじっと眺めていた時、その日は親戚の家族が遊びに来ていたのですが、その小さい子供二人が私が見ている石に気付き、近寄ってきました。
5歳のSくんと、7歳のKちゃん。

S:「何見てるの?」

K:「なにそれ!見せて、見せて!」

今までこの石を誰かに見せたことは無かったのですが、子供にせがまれると駄目とはいえず、二人に見せてあげました。

K:「すごい、綺麗だねー」

S:「・・・・・・あ」

はしゃぐKちゃんとは対照的に、怯えたような様子のSくん。

私:「どうしたの?」

S:「それ、こわい」

何故かSくんは石を怖がっていました。
Kちゃんは「なにそれー」と笑っていましたが、その場は何もなく、また二人は一緒に外へ遊びに行きました。

それから夜になって夕飯も終わり、そろそろ親戚家族が帰ろうと帰り支度をしていた時。
私はキッチンで洗い物を片付けていたのですが、ふと背後に誰かが立つ気配を感じて振り返ると、Kちゃんが立っていました。

私:「Kちゃん?」

何だか様子がおかしかったのです。
顔色が真っ白で、目つきも虚ろ。
口の端には泡立ったよだれが垂れていました。

私:「Kちゃん、どうしたの?大丈夫?」

屈みこんで顔を近づけると、Kちゃんはぽつりと、

「ナーシュ」

何が起こったのか分かりませんでした。

気がつくと私は顔を押さえて倒れていて、Sくんの泣き声が聞こえて。
それを聞きつけた親戚のおじさんがやってきて。
私の姿を見るなり、「何があった!?」と大慌て。
私はすぐに起き上がったのですが、おじさんに「動かんでいい」と言われて椅子に座らされました。
私は右目のあたりから流血していて、ぼたぼたと床に血が落ちるのを放心状態で見ていました。

(何?何で?今、Kちゃんと話してて・・・・・・)

私:「おじさん、Kちゃんは?」

おじさん:「K?Kならそこにいるだろ。ちょっと待って、今母さんがタオル持ってくるから」

言われて見ると、Kちゃんは私のそばに立っていました。
不思議そうな顔で、「お兄ちゃん、どうしたの?」と言うKちゃん。
足元には血のついた果物ナイフが転がっていました。

そう、さっきあれで、いきなり顔を。
でも・・・・・・理由が分からない。
それに私に切りつける直前、確かに言った。

「ナーシュ」と。

それからすぐに病院へ運ばれました。
幸いにも眼球は無事で右目の上の眉あたりに痕が残ったものの、視力には問題ないということでした。
現場は誰も見ておらず、私の怪我は転んだ拍子にナイフで切った、ということで落ち着きました。

後でそれとなくKちゃんに聞いてみましたが「気がついたらお兄ちゃんが倒れてた」と言っており、覚えていない様子。

私としてもKちゃんを責める気になれず、むしろ「ナーシュ」と呟いていたのが不気味であまり深く追求するのはやめました。

その後、私は黒い石を持ち歩いたりすることはやめました。
きっとこれが原因だ。
思えばKちゃんのことだって、直前にあの石に触らせた。
この石は何かおかしい・・・・・・そう考え、石を手放すことに決めました。
とはいえただ捨ててしまう気にもなれず、霊感があるという友人のYに相談してみることにしました。

Yには自分の霊体験など何度か聞かせてもらったことがありましたが、いつもは友達の間で半ばネタとして話していたので、私自身Yに本当に霊感があるのかは半信半疑でした。
なので、駄目もとでとりあえず連絡してみたのです。

※パワーストーンと夢(後編)へ続く

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