ヒカリゴケ国沢一誠の話。
僕の知り合いで、四十歳代の人なんですけど、関西で英会話教室の先生をやっている人がいるんです。
その先生というのはすごく真面目な方で、もう結婚もされているんですけど、結婚生活十数年の間、一度も浮気をしたことがなかったんです。
ただでも、数年前に一度だけ浮気をしてしまったんです。
それでその浮気相手というのは自分が先生をしている英会話教室の生徒さんで、二十代後半のＯＬをしている方なんです。
その女の子も先生には家庭があることが分かった上でお付き合いをしていたんです。
ただ付き合い始めて半年ほどした時に、その女の子の方に独占欲が出てしまって、その先生に対して「奥さんと別れて私と一緒になってほしい」というようなことを言うようになったんです。
でも先生はその話をずっと受け流していたんです。
でもそれが日に日にエスカレートしていって、もう話をはぐらかせないような状況になってしまった。
もうこれは無理だなぁ、そろそろ別れないといけないなぁと思って、でも勝手なんですけど、その女の子に「ごめん、俺は家庭を捨てることは出来ないから、今日で会うのは最後にしよう」と言ったんです。
でも当然女の子は先生のことが好きですから、「嫌だ嫌だ」と言ってなかなか別れてはくれなかった。
先生は困って半ば強引に突き放すような形でその場を去ったんです。
そうすると翌日女の子から電話が掛かってきたんです。
先生も出るのは嫌だなぁ・・・と初めはためらったんですが、このままモヤモヤしたままでいるのも嫌だなと思って電話に出たんです。
先生：「もしもし」
女の子：「もしもし先生？私の事、好き？」
先生：「いや、君とはもう・・・」
そう言いかけると、電話が切れてしまった。
何で切れたんだろう？とは思ったんですけど、逆に構っても関係が悪化するかなと思って、この日はその電話をそのまま放っておいたんです。
そうすると翌日もその女の子から電話が掛かってきたんです。
その女の子はまた「先生私の事好き？」と聞くんです。
「いやだからね・・・」と言おうとすると、また電話は切れてしまった。
変な別れ方をしたので先生は逆に少し心配にはなっていたんですけど、やっぱり構い過ぎるといけないと思って放っておいたんです。
そうしたらまた翌日も電話が掛かってきた。
女の子：「先生私の事好き？」
先生：「だから・・・」
言おうとすると、また電話が切れた。
「もう一体何なんだよ！三日連続で掛けてきて」と思っていたら、またすぐに電話が掛かってきて出ようと思って画面を見ると今度は登録のされていない電話番号だったんです。
電話に出てみると「あのもしもし、警察なんですが、ちょっと事情を聞きたことがあるので、署まで来てくれませんか？」と。
それで先生はすぐに警察署まで行って、「どうされましたか？」と聞くと、「この子に見覚えはないんですか」と言われ、写真を出されたんです。
その写真に乗っていたのは先生が浮気していた女の子だったんです。
先生は「あ、知っています。どうかされましたか？」と聞くと、「大変申し上げづらいんですけど、今朝、山の中で首を吊っているのが見つかったんです。彼女は携帯電話を握りしめたまま、首を吊っていたんです。それで一つ不思議なことがあるんです。その携帯電話を調べたら、昨晩あなたにお電話をしていますよね」
「はい、話しましたよ」と答えると「やっぱりおかしいんですよね。彼女のことを調べたら、二日前に亡くなっているんです」
死んでいるはずの女の子から電話が掛かってきていたんです。
三回電話が掛かってきて、初日は生きていたんですけど、そして電話で「先生私の事好き？」と聞いて、自分に気持ちが無いことが分かったから死んだんですよね。
それで残り二回は未練で気持ちが残って電話を掛けていたというお話なんです。
