小学4年生の秋であたしと姉がまだ小さい頃、長野県の本家に泊まりに行った時の話。
父親の弟が9歳くらいで死んでるのね。
昼間、お仏壇に飾られた少年の写真が、”生きていたらおじさんに当たる人”だと聞いて、不思議な感じでお線香たてて手を合わしたわ。
その夜、本家の座敷で眠っていると、何だか寝苦しくて目を覚ましたの。
肩を叩く感じがした。
ポンポン・・・子供の手なのよ。
振り向くと、白いシャツを着て麦藁帽子を被った、夏のかっこうをした男の子なの。
直感で死んだおじさんだと分かった。
顔も写真にそっくりだったしね。
何もしゃべれなくて、ただ驚いて彼を見たら、手を引っ張るのよ。
ついていくしかなかった。
ひたひたと廊下がきしむ音を今でもよく覚えてる。
その子が仏壇の前で止まると、あたしに笑いかけた。
怖いというより何だか温かい気持ちになった。
でも、次の瞬間、ふーーーっと彼が消えたの。
そしたら写真がね、光るのよ!!電気も火もないのに!!写真が光るの!!
たぶん男の子はさっき見せた笑顔で、お仏壇の写真で笑ってる。
自分はその夜どうやって布団に戻ったか記憶にないんだけど、不思議な体験だったわ。
おじさんはきっと、おじさんなりにあたしを歓迎してくれたんだと、何だか嬉しかった。
後にこの話を父親にしたら、おじさんが9歳になった真夏の昼間に川で遊んでいて、裸足で何かガラスかなんかを踏んで怪我をしたらしい。
ただの怪我だと思ってたら、悪い毒が体に回って、当時の田舎の医療は遅れていて、早期発見なら現代なら助かったような怪我だったらしい。
2日後に亡くなったのよ。
おじさん、だから夏の麦わら帽子だったのね。
ありがとう、歓迎してくれて。