目撃者を募る看板

今の街に越してきて、2週間ほどたった頃のことだ。

残業を終えて終電で最寄り駅を降りてから、自宅まで急ぎ足で向かっていたときのこと。
途中信号機のない高架下の道路と、高架沿いの道路が十字にクロスした交差点があり、見るからに暗く、夜間女性が一人で歩くのは勧められないような横断歩道を渡りきったところで、ふいに背後から「すみません」と声を掛けられた。

飛び上がるほどびっくりして振り向くと暗い表情の女性がすぐ背後に立っている。
交差点を渡るとき、いずれの方向にもその女性は見えず、背後から足音も聞こえていなかったので、「あれ?」という凄まじい違和感があったのだが、ハッキリした存在感があり、少なくとも幽霊とは思えない。

女性:「先週この交差点でひき逃げ事件があったんです。」

自分:「ひき逃げ?そ、そうでしたか・・・。」

女性:「私、ずっと目撃者を捜しているんです。」

自分:「えっ、個人的に探されているんですか?警察には届けられました?」

その問いかけを無視するように右手をすっと挙げて、俺の背後を指さす。

女性:「向こうからきた車にひかれたんです。」

その様子や仕草、表情の不自然さにゾクリとしながら、指さされたその方向をゆっくりと振り返り、再び女性の方へ向き直ると、その女性の姿が忽然と消えていた。

死ぬほどの恐怖が全身を凍り付かせ、ガクガクしてもつれる足を蹴り出し、自分でも訳のわからない叫び声を出しながら、なんとか帰宅した。

翌朝その交差点を注意してみると、一週間前の日付で交通死亡事故が発生しており、目撃者を募る真新しい看板が立てかけられていた。

東京都練馬区の話です。

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