友人の御主人が脳溢血で急逝した。
四十九日が明けてから、友人が御主人行きつけのバーに御主人の死を伝えに行くと、バーのマスターは御主人が亡くなったことをすでに知っていた。
週2回ほど、気がつくとカウンター隅の席に御主人の幽霊が座っているのだと言う。
マスターは黙って御主人のボトルと氷と水を出してあげていたが、御主人が消えるたびにボトルのウィスキーは微妙に減り続け、とうとう無くなったので「今は水割りを出してる」とマスターは言ったそうだ。
「悪いから主人の名前でボトルを入れてきた」と友人は語った。
ほの怖なのか、ほのぼのなのか、マスターが詐欺野郎なのか、自分にもよくわからない。