家に、よく切れるけどよく無くなる羅紗切りバサミがあった。
家族の間では無くなるたびに、「また消えたね」とか笑い話になってたんだ。
ある夜、寝てるとそのハサミのシャヒーンシャヒーンって音が聞こえてきて、その音がだんだん近づいきたんだ。
家は人が歩くと足音がするようなボロ家なんだけど、近づいてくるのはシャヒーンシャヒーンとハサミの音だけ。
さすがに怖くなって、布団に包まってやり過ごそうとしてた矢先、耳元でブチン!って鈍い音が・・・。
不思議と痛みは無かったから、夢みてるんだと思ってそのまま眠りについた。
翌朝「おはよう」とおかんに声をかけようとしたら、おかんが驚いた顔で「あんた!耳どうしたの?血塗れやよ!」と。
あわてて洗面所の鏡で自分の右耳をみると、言われた通り渇いた血がべっちょり。
右耳を上の方から1㎝程縦に裂けてる。
そしてなぜか洗面所に羅紗切りバサミが置いてあった。