友人にネイリストをしている女性がいます。
本来の職業は美容師なのだが、ネイルアートが得意で、現在はそちらの依頼が入ることが多いと言っていました。
今でこそネイルアートをしている人はあまり多くはないそうですが、一時期は猫も杓子もネイルアート状態で、休む間もなかったと言っていました。
そんな彼女が、まさにネイルアート絶頂の頃、「休みを取ろう」と思ったできごとがあったそうです。
来る日も来る日も誰かの爪を見て、それを整えて行く仕事。
彼女は心底、嫌気が指していました。
「目が疲れて、肩が凝る。自分のしたいのはこんなことなのかって疑問だった」
そんな疲れを押して出勤したある日のこと。
マネキンにつけられているウィッグがずれているのを見て、それを直そうと手を伸ばしたそうです。
ガリッ・・・。
鈍い音がして、手の甲には鋭い痛みが走りました。
慌てて手を引くと、そこには4筋の赤い傷が付いていたそうです。
「何かな、と思ってマネキンを見たらさ」
マネキン側頭部、ウィッグの隙間から、薄汚れた手が覗いていたそうです。
「その手、爪に何もつけてなくて、それを見た瞬間に、怖いとかより先に『どうネイルアートを施そうかな?』って考えてた」
手が音もなく消えた後、彼女は仕事を休むことを決意したと言っていました。