住職もいないようだった

荒れ果てていた。
住職もいないようだった。

鐘楼らしきものがあったがそれは崩れ、鐘楼の天井だったものの瓦礫の中に蒼褪めた鐘が見えていた。
廃墟散策をしてたわけでもなく肝試しに行ったわけでもない。

免許取立ての友人が大学野球で成績をあげそのお祝いに買ってもらったベンツを自慢するためにドライブに誘ってくれたのだ。

ほいほいついていった先で新車のタイヤがパンクした。
修理を待つ間暇なのが嫌で荒れた道を見つけたから辿ったのだ。
そうして上で言ったような廃寺についた。

散策して回っていると竹林のあたりがやけに清掃されてる。
色々見て回ると家庭菜園に出くわした。

そしてそこで暮らしている修験者といった風体の浮浪者を見つけた。

これがなかなか物知り、というのも廃寺の関係者だったようだ。

色々話を聞いていく中で面白い話をひとつ教えてもらった。

この廃寺、昔は山間にまで響く鐘の音が重宝されて栄えていたらしい。
寺のある山中には藩御用達の材木問屋の息がかった村がたくさんあり、当時は時計などもないから、定期的になる鐘の音が時報代わりだったそうだ。

けれどある日、寺の小坊主が何かの理由で起きられず鐘が鳴らなかったそうだ。

山間の三つの村の村人は日の出の鐘で起きだして仕事に出る。

それが鳴らなかったものだから、みんなして遅刻となった。

さてその日、昼から天候は大荒れとなった。

鉄砲水が材木を流す川に流れ込み、作業していた村の若い衆のうちかなりの数がかえらなかった・・・。

これに怒ったのは帰りを待っていた彼らの家族。

寺に詰め掛けて鐘がならなかったせいだ!とつめより、ついには小坊主を殺してしまったんだとか。

以来、時折小坊主の亡霊が出て鳴らし忘れた日の出の鐘を鳴らす、という噂があったんだとか。

そのとき「ごぉんっーーーー」と遠くで音がした。

二人して吃驚仰天。

まさかね?と思いつつ二人で確認しに戻ってみると友人がいた。

鐘楼の瓦礫のとこでちょっとだけみえてる鐘を的にして石を投げていた。

あんな話のあとだから彼を必死で止めたとも。
止めずばなるまい。

その時だった。

「ぼぉおおおんーーーーー」

音がした。

瓦礫に埋もれ地面におちた鐘は反響させる振動を吸われてしまう。

さっきいったはずだが、結構大きめの石を投げてもごぉんが精一杯だ。

なのに「ぼぉおおおおんーーーーーーーー」ともう一度響いた。

浮浪者は真っ青になって慌てふためく。
音のする方角は瓦礫からじゃなかった。
本堂の裏の方から。

なにやらさっぱりといった友人の手を掴み(怖いから)手を繋いだことで友人の分の勇気を得たような気分になり好奇心に従うことにした。

鐘楼はもう一つあった。
こちらはまだ崩れていないが、鐘は下され、しかも転がっているんだ。

なのに、「ぼぉおおおおん」

浮浪者はかなーり後ろの方で隠れて見ている。

勇気を振り絞ってみてみる。
音は中からするようだ。

「ヂリッザリッ」といった音が鐘の音の中に混ざる。

鐘の中の空洞に目をやると、そこには古びたカセットコンポがあった。

もちろん、電気なんて引かれていない、そんな場所。

風雨にさらされてもおかしくない場所。

そのスピーカーが大音量を吐き出す。

全身の毛をびりびりと揺るがしながら、「ぼぉおおおおおおおおおおおん」と、また音がした。

凶器じみた音が過ぎ去ったあと。

「おっ・・・・・・おっ?鐘?おっかねーな」

友人はかなり無理をし引きつった顔をしながら、場を和ませようと必死になってくれた。

死ぬほど洒落にならないおっかねー話。

自慢癖が玉に瑕の怪奇現象に気づきつつも、駄洒落心を忘れない彼に敬礼を。

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