中学生の時の事。
ごくありふれた公団住宅に住んでいたんだ。
父、母、妹の四人暮らし。
両親とも夜仕事で出ている事が多く、歳の離れた妹とよく留守電していた。
居間で妹はテレビをみていて、俺は隣の自分の部屋で早めにベッドに入ってたんだ。
その頃頻繁に金縛りにあってて、無理矢理うめいて母ちゃんによく起こしてもらってたんだ。
そんでその日も例によって、耳がキーンとしだして金縛りになったんだけど、なんだかいつもと違ったんだよ。
壁際にベッドがあって、壁の向かい側に入り口があって、その入り口の向こうに妹がいるっていう位置関係。
扉を挟んでテレビの音も聞こえる。
その時はベッドの横に黒いモヤがあって、一つだけのモヤが分裂する様に増えて行ったんだ。
めちゃくちゃビビってたんだけど、薄目で見ているとそのモヤが落ち武者のように形を作っていき、ガシャガシャと部屋の中を歩き回りはじめました。
そのうち、俺に気付いたというか、こっちを向いて首に手を伸ばしてきたんだ。
「あ、ヤバい・・・・・・」
死ぬ程心臓がバクバクしてた。
落ち武者っていうか、鎧を着てるのがわかるのに顔が真っ黒なモヤで全く見えない。
動いて逃げ出したいけど、やっぱり動けない。
声を出そうにも出ないし、思いっきり踏ん張って出して、かすかに「ぁぁぁぁ」とかしか出ない。
いつも金縛りの時は、そういうかすれたかすかな声で母ちゃんが部屋に来て助けてくれてたんだ。(なぜか部屋の扉が開けばいつも金縛りが解けていた)
妹もそれを知っていたから『聞こえてんだろ!早く開けろ!』って思ってた。
やっぱり異変に気付いてるらしく、部屋の前にきて「お兄ちゃん!?」とか言ってた。
『早く開けろ!!!』って口では言ってるんだけど、「ぁぁぁぁぁぁ!」とかすれた声しか出ない。
最終的には妹も観念したらしく、恐る恐る扉を開けてくれて、それによりいつもどおり金縛りから解放されました。(相当扉の前でビビってたらしい)
俺すっげー汗かいてました。
妹に落ち武者がいっぱい出てきて、「ホント死ぬかと思ったよ」とか話しをしながら首を触るとなんだか横一線で10センチ位肌がボコボコしていて、やっぱり夢じゃなかったんだと実感しました。
それまでは金縛りになっても、そこまでビビったのはなかったのでその時は家に一人じゃなくて良かったと思いました。