私の母が病院で看護師をやってたんだけど、その母から聞いた話。
母がまだ新人だった昭和の頃のこと。
その日、母が夜勤で詰所にいたところ急に悪寒がしたと思ったら、詰所の前を誰かが通ったんだって。
こんな時間に誰だろう?と母が窓から覗くと、羽織袴の老人の後姿が見えたそう。
母が「どうしました?」と声を掛けたけど、老人は何も言わず行ってしまったので不審に思って後を追うと、老人は階段を上がって二階の奥の個室へ入って行ったんだって。
その部屋は、元市議で町の傑士(けっし)とかいう男性患者が入院してたそうなんだけど、母が続いて部屋に入ると、7,8人くらいの男が患者のベッドを取り囲むように立っていて、全員で患者の顔を覗き込みながら「おい、早よ死ねや、早よ死ね」と言っていた。
母が驚いて「何してるのあなた達!!!」と一喝すると、男達はいっせいに母の方を向いた。
だけど、その顔はどれも真っ黒で何も見えず、すぐに闇に溶け込むように全員消えたんだって。
で、結局その患者は回復して政治家にカムバックしたらしい。
母は「私、よけいな事しちゃったのかな」と言ってたけど。