俺が通ってた高校の近くにお寺があるんだけど、一昔前『牛女』が出るってんで結構有名な場所で、某アニメを見てた人ならわかると思うけど、あの辺は登下校時、小一時間山登りをせにゃならんのですよ。
その登下校ルートは二つあって、ひとつはちゃんと舗装された県道を登るルート。
二つ目は小山を切り拓いて作られた、両側にフェンスの張られた里道を通る必要があるんだけど、ある日、部活で日も暮れかけた時間にに一人でその里道を下っていると、岩に腰掛けて頭を抱えている牡丹柄の着物姿のおばさん(?)が見えたのね。
中・高とこの道を利用してた俺はへっちゃらだけど、参観に来る親御さん達なんかは、途中でへばってしまって座って休憩している事も多いわけ。
その時も、「こんな時間にどうしたんかな。年配にはキツいやろなぁ」とか思いながら、おばさんの前を通り過ぎようとしたの。
そしたらおばさんが座っている辺りから、動物の鳴き声のような「ぶるるるる・・・」って声が聞こえたので、犬も一緒なのかな?と思った俺は、チラっと振り返ったの。
そこからは途切れ途切れにしか覚えてない。
一つは、赤い牡丹柄のように見えていたのは、どす黒い染みだった事。
二つ目は、顔が異様に長かった事。
三つ目は、全速力で里道を下り切った先に見える公園のブランコに、それが座っていた事。
家に帰って気が狂ったように泣いた。
それから卒業まであの道は一度も通ってません。