2年後に必ず・・・

俺の家は戦争中に完成した、わりと古い部類に入る。

今、俺が使っている部屋、親父が使っていた部屋、そして祖父ちゃんが使っていた部屋は同じ。
つまり長男が代々、勉強部屋なり書斎としてなり譲り受けたもの。
その部屋で親父と祖父ちゃんは変なものとコンニチハして、そいつを撃退しているらしい。

その”変なもの”とは、窓のところで逆さまになって部屋の中をのぞき込んでくる(睨んでくる?)女性の頭。
女性は一見、短髪に見えたがよく見ると髪が焼けただれた様になって頭皮に張り付いていたと。

件の部屋は2階だから外から普通の人間がのぞき込んできているということは考えにくい。

ちょうど机が窓のある壁にピッタリくっついていて、下に落としていた視線を上に向けると窓が真ん前に来る。
そこにそんな生首が現れたら心臓に悪いことこの上ない。

元日本陸軍技官、当時は某電機メーカーで電子機器開発の研究員をやっていた祖父ちゃんは会社の仕事なのか個人研究なのか、ある夏、部屋(当時は書斎)で高圧電流を使う実験をしていたらしい。

ふと手を休めて網戸を張った窓に目をやるとその女性の頭が祖父ちゃんをジトォっと睨んでいた。
普通ならば驚いて悲鳴を上げる、後ろに後ずさるとかする。
さすが祖父ちゃん、元軍人。

何を思ったのか手元にあった電極(ワニ口クリップみたいなやつだと思う)をその女性の頭にグイと押しつけたらしい。
特に悲鳴やバチっという音はならなかったらしいが、その女性の頭は一瞬、ビクッとなって落ちていったらしい。

木に成っていた柿が屋根に落っこちてごろごろ転がるときと同じような音がしたらしい。

さて、次は親父。
祖父ちゃんと同じく電気屋になった親父はある夏、件の部屋で半田ごてを使って電気工作をしていたらしい。

ふと手を休めて網戸を張った窓に目をやると件女性の頭が親父を凝視していた。
普通ならば驚いて悲鳴を上げる、後ろに後ずさるとかする。親父は祖父ちゃんからこの女性の生首の話を聞いていたからなのか、そこまで驚かず手元にあった熱した半田ごてをその女性の頭にグイと押しつけたらしい。

親父が言うに焼けてブスっ食い込む感じがしたけれど妙に感触が軽かったと。
やっぱり女性の頭は落ちていったらしい。

親父と祖父ちゃん、その生首に遭遇したのは二人とも25歳の夏だったと。
俺にもやってくるなら2年後・・・。

残念ながら俺は親父は祖父ちゃんと違って電気屋じゃなくて化学屋になってしまった。
俺は親父が祖父ちゃんみたいな電気技は使えない。
親父や祖父ちゃんが使っていた机の引き出しに塩基を入れておくか、酸を入れておくか、過酸化物を入れておくかにちょっと真面目に悩んでいる。

生首の出所についてだが・・・俺の自宅は戦前からある某大手写真機製造社のすぐそばにある。
単に一般用のカメラだけじゃなくて偵察機に搭載する航空写真機まで製造していたらしい。

もちろん学徒動員もされた。
そして空襲も何度か酷いのがあって、一度、うちの近辺に遺体が散乱する事態になったらしい。

祖父ちゃんや近所に住んでいる高齢者の方はそれ以外に化けてでるような心当たりがないと言っている。

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