亡くなったのを理解できない

今年5月3日、新築した家に一家で引っ越した。
引っ越し直後は何かとバタバタするだろうと思い、4月30日に主人と2人で近所の挨拶まわりをすませた。

右隣のお宅は80代後半の老夫婦の2人暮らしで、同じ敷地内に住む長男一家が身の回りの世話をしているそうだ。
着工前に挨拶に行った時に、御主人は痴呆症だと長男の奥さんから聞いていたので、この時も奥さんに菓子折りを渡し、勝手口で少し立ち話をした。

奥さんは着工前より縮んだように?見えて小さくなっていて、「身体を壊してしばらく入院したの」としょんぼりしながら、「あなた(=私)のことはよく覚えてるわ、美人さんだもの」とお世辞を言ってくれた。
御主人はダイニングの椅子に腰かけてこちらに背を向け、私たちには全く無関心でテレビを見ていた。

ところが・・・。

昨日、向かいの家のかたから、右隣の奥さんは「3月に亡くなっている」と聞かされたのだ。
そんなはずはない、4月末に主人と2人でお会いしていると言ったら、お向かいさんはわざわざ町内報を持って来てくれて、そこには確かに3月某日に訃報が出ていた。

奥さんの顔と声は覚えていたし、向こうもこちらを覚えていたのだから違う人だったとは思えない。
主人も「なんだか気味が悪いな」と嫌な顔をしている。
でも、私は何となく、私たちが挨拶した奥さんが幽霊だったとしても不思議ではないような気がするのだ。
御主人は痴呆症だから、奥さんが亡くなったことを理解できず(というか幽冥の境がもうアヤフヤになっていて)、奥さんがテーブルに置いた引っ越し挨拶のお菓子に、普通に手を伸ばして食べている様子が目に浮かぶような気がしてしまう。

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