杣人に聞いた話
一人で山に入って仕事をしていた時のこと。
煙草を吸いながら切り株に腰掛けて電話をしていた。
相手は遠く離れた山中で働いている仲間。
やはり一人で煙草休憩中。
他愛もない話に花を咲かせていると、突然目の前にスッと白い手が現れ、持っていた煙草を払い落として視界の外に消えた。
慌てて周囲を見渡しても人の気配はない。
思わず「アレ?」と声が漏れたのと、電話から『ん?』という声が聞こえたのが同時だった。
「どうした?」
『いや、さっき目の前に手が出てさ。煙草をパッと払い落とされたんで、見回してみたんだけど・・・・・・誰もいないみたいだな』
二人が見たのは、細い女のような手。
なぜか、手首に赤い布のようなものを巻いていたそうだ。