これは私の親しい友人の女性が体験した実話です。
話自体はもう20年ほど前の事になります。
当時、この友人とは付き合っている訳でもないけど、ただの友達って程度でもない、というなんとも微妙な関係でした。
仕事の後、良く一緒に飲みに行ったりカラオケに行ったりと仲間も交えて良く遊んでいました。
彼女は小さな頃から不思議なものが見えたりする、とか金縛りなんかも良く経験する、という事で時々ちょっとした体験談などを聞かせてもらっていました。
仲間数人と遊びに行った帰り、彼女の車で家まで送ってもらった時です。
車中で彼女が「ねえ、一昨日の夜、私の家に来た?」と聞いてきました。
「いいや、行ってないよ。なんで?」と答えると「あー・・・やっぱりね・・・一昨日の夜って雨降ったっけ?」とまた聞いてきたので「いや、降ってないよ。ってか、何の話?」と尋ねてみると、彼女は「う~ん・・・」とちょっと考え込んでから「あのね、一昨日の夜ね・・・」と話だしました。
その日、彼女は仕事から帰宅し出かけることも無く部屋で過ごし、22時を回った頃にベッドに入ったそうです。
彼女の家は2階建てで部屋は2階にあります。
小学生の頃まで弟と一緒の部屋だったそうで、2段ベッドがあり、彼女はそのまま上の段を使っていました。
すっかり熟睡していた彼女は夜中にバイクの音で目が覚めたそうです。
そのバイクの音というのが私のバイクの音だったと言うのです。
でも私は当然そんな夜中に彼女の家には行っていないんですが、家の前でバイクの音がピタッと止んだそうです。
「あれ~、こんな時間になんだろう?」と寝ぼけた頭で考えていると急に土砂降りの雨が降る音が屋根から聞こえてきたそうです。
「あ・・・アイツ(私の事)、雨大丈夫かな・・・」とぼんやり考えてたら部屋の横の階段から誰かがゆっくり上がってくる音が聞こえてきたそうです。
「あれっ、アイツ、上がってきたのかな?」と一瞬考えたそうですが同時に「いや、違う、これはアイツじゃない」と直感したそうです。
そもそも、私が夜中に、しかも勝手に家に入って来る事などあり得ない事だと分かっていたからだそうで「別のモノが来ちゃった・・・」と分かったそうです。
階段を上る音はすでに部屋の外まで来ており、仕方が無く目のところまで布団を引き上げて寝たふりをしたそうです。
『ス、ススーッ・・・』と部屋の引き戸が開く音がして誰かがゆっくり部屋に入ってきたそうです。
その間も土砂降りの雨の音がしています。
『ギッ・・・ギッ・・・』と、2段ベッドのハシゴを上がってくる音・・・・「早くどっかへ消えてくれ~・・・・」と考えながら布団を被っていたそうです。
しばらくジッとしていたそうですが、雨の音以外、他の音はしませんでした。
「あ・・・行ったかな・・・」と思った瞬間、おでこにパラパラッ、と髪の毛の感触があり、反射的に「ん?」と布団のふちから目を開けてしまったそうです。
すると、目の前、本当にくっ付くんじゃないかと思うほどの距離に髪の長い女性の顔があり、彼女の顔をジーッと覗き込んでいたそうです。
驚いた彼女は必死で目を閉じ、頭の中でお経を唱えていたそうです。
しばらくするとそれまで轟々と聞こえていた雨の音がパタッと止んだそうで恐る恐る目を開けると、そこには誰も居なかったそうです。
そこで彼女は飛び起きて「アイツ、どうしたのかな?!」と部屋の窓に駆け寄り外を見たそうですが当然誰もいません。
それにあれほどの土砂降りの雨の音がしたにも関わらず、外は雨が降った痕すら無かったそうです。
一瞬、「夢でも見たのかなあ・・・」と思い直し、ベッドへ戻ろうとした時、閉めてあったはずの部屋の戸が開いているのを見て「やっぱり何か来たんだ・・・」と確信し布団にもぐりこんだそうです。
何故、私のバイクの音がしたのかは未だに分かりませんが、その後も時々、同じ事が起こったそうです。
彼女の隣の部屋の弟も色々と体験しているそうで、どうもその家自体に何かあるんじゃないか、と彼女は言ってました。
私なら卒倒してしまうような怖い体験ですが、彼女はそれほど怖くは無いと言ってます。