これは小学校6年生のときに実際に体験した出来事。
俺の通っていた小学校は、市内でもっとも生徒数の多いマンモス校だった。
新校舎と木造旧校舎が連絡通路で繋がっており、1年生~4年生までは新校舎、5、6年になると1~3組が旧校舎、4~6組が新校舎で分かれるようになっていた。
5年のときのクラス替えで、俺は卒業までの2年間ずっと旧校舎で授業を受けることになったんだけど、まぁ、ありがちな話、旧校舎には幽霊が出るっていう噂で有名。
遊びに夢中で下校が遅くなったりすると正直めちゃくちゃ怖かったのを覚えてる。
この旧校舎は1階が音楽室と工作室。
そしてトイレがあって、2階と3階が教室として使われていた。
旧校舎からは新校舎のクラスの窓が見えたし、新校舎からは旧校舎のベランダが見えるような校舎の配置だ。
で、ある日。
国語の授業を受けている最中に外が騒がしくなった。
俺はベランダ側の席だったから、なんだろう?と思って新校舎のほうに目をやったんだ。
そしたら3学年の、あるクラスの生徒が窓際に集まっていて、旧校舎の俺のクラスのほうを指差し「教室に戻れ!」「怒られるよー!」などと叫んでいた。
授業中なのに何さわいでんだろ?と変に思っていたら、その3年のクラスを受け持ってる先生がうちのクラスにやってきて、「低学年の女子と思われる生徒がベランダでうろちょろしてる」って、注意しに来たんだ。
でも、うちの担任と3年の先生もベランダに出て確認したんだけど誰もいなくて・・・。
俺もクラスの連中も、生徒がベランダをうろちょろしてたら気づいただろうし変だなと思っていた。
すると、「センセイそっち!隣のクラス!」と、新校舎からこっちを見ていた生徒たちが叫んだ。
「なんだ、隣のクラスと間違えただけか」って一瞬みんなで笑ってたんだけど、結局となりのクラスにもいなかった。
とにかくなにか変な感じで、気味が悪くなった。
学年主任や他の先生たちも、その女の子探しをし始め、「校内を徘徊してる生徒は本校の生徒ではありません、先生方が探していますので皆さんは落ちついてください。先生方が戻るまでは静かに自主学習をするようにしてください。」というような内容の校内放送が入った。
学校全体がもう騒然としちゃって、新校舎のほうの生徒も、旧校舎の生徒も勉強どころじゃなくなってて、謎の女の子を気にしていた。
そのとき、隣のクラスのやつらがワラワラとベランダに出てきて、新校舎のほうを指差して騒ぎはじめた。
旧校舎にいる他のクラスのやつらも気づいていた様子で、ベランダに出てそれをみんなが確認した。
校内を徘徊しているらしいその女の子は、新校舎の4階トイレの窓から今にも落っこちそうな勢いで、ひょい!ひょい!と身を乗り出していた。
おかっぱ頭で、一年生の黄色い帽子をかぶり、白いシャツに赤いスカートらしきものを着ていたのが見えた。
みんな「危ない!」と悲鳴を上げていた。
その瞬間、女の子がスッと引っ込んだかと思ったら、ほぼ同時に学年主任が窓から顔を出したんだ。
俺たちはまたもや騒然、あのタイミングで顔を出したなら、先生は女の子とすれ違うはずなのに、と・・・。
結局、女の子は見つからなかった。
みんなが目撃していたあの女の子は幽霊以外考えられない、と学校はその日、その話題で持ちきりだった。怖くて泣き出す女子もいたし、軽いパニックだった。
生徒が下校の際は親が迎えに来させられたし・・・。
当時、生徒に対して認めることはしなかったが、後に同窓会で担任は教えてくれた。
説明のつかない何かが校内を徘徊していた不思議な事件として、当時いた先生の多くが、あの少女を幽霊と思っていることを。
18年経った今でも同級生に会えばその話になる。