借家にはそれなりの過去がある

カテゴリー「心霊・幽霊」

俺的に洒落にならないくらい怖い話。

当時、俺は三歳。
借家の一戸建てに住んでた。
親が家の一階で夜遅くまで仕事をしてたんで、俺はいつも2階にある寝室で、生まれたばかりの弟と一緒に寝ていた。

が、その日だけはどうしてか無性に親と一緒に寝たいとぐずった。
けど母親になんだかひどくきつめに怒られて、結局渋々先に弟が寝てる寝室へと上がっていった。

寝室の扉は引き戸で、ちょうど上の方に30cm×40cmくらいの窓があった。
中に入ってふとその窓を見上げたら・・・その窓に男の顔が見えた。

ヘルメットをかぶった男が部屋の中を覗き込むように、目玉だけギョロギョロと動かして見回してる。

俺はてっきり、親父が遅くまで起きてるから、おどかすつもりで上にあがってきてくれたんだろう?と思って、ガラッと扉を開けた。
だけどそこには誰もいない。

階下から親父とおふくろが仕事で電話している声が聞こえてるし、階段を上がってすぐの寝室とはいえ、開ける瞬間まで見えていた男がいなくなることはさすがにあり得ない。

もっかい扉を閉めて見上げると男はいる。
先ほどと同じように・・・。

もう一度ドアを開けた、やはり誰もいない。
閉めて確認すると、男はいる。

俺は怖くなって両親がいつも寝ているダブルベッドに潜り込んで布団をかぶった。

ガクブル状態。

そしてそのまま眠ってしまった。

あれが何か親に訪ねたかったのだが、それ以降見かけることもなく、引っ越ししたのもかさなって、そんなこと忘れかけていたんだけど・・・。
小学生になった頃、心霊番組とかが流行りはじめて、その体験談とか聞くうちにあれって幽霊だったのか・・・とわかった。

もう家も引っ越した後だったので、親に何気なくそういう話をした。
幽霊が見えるような霊感を持った子供ではないので、親はびっくりしたようだが、そのうちこんなことを聞かされた。

その家に住んでいた何人か前の人は、兄弟でその一戸建てを借りていたそうなのだが・・・その片方が交通事故でなくなっていたらしい・・・。

できすぎてて洒落にならないが、そういえば幽霊は俺に危害を加えるわけでもなかった。

見かけたのは一度きり、何か見渡して探すような動作をしていたことを考えれば、ただ部屋にいるはずの家族に会いに来ていただけだったのだろう、なんだか妙に納得してしまった。

その家は震災で全壊し、今はビルが建っている。

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