本当は”それ”を見たんでしょ?

カテゴリー「心霊・幽霊」

怖い話というか、それ自体に関わる話を投稿したいと思います。

僕の父はいわゆる「そういうものに敏感な人」で、父が学生時代に吉祥寺のアパートに住んでいた時は、それはもう様々な怪現象に遭遇したそうです。

詳細に話すと長くなるのですが、寝ている時に突然現れた男に包丁の背中で両頬をなぞられながら「一緒に来いよ」と一晩中言われたり、風も無いのにカーテンが膨らんでいるので、恐る恐るよく見てみると、明らかに人の顔の形をしていたりと・・・。

僕がまだ小さい頃、テレビで夏の心霊特番が始まる度にそういった怖い話をせがみ、父は渋々(といいつつ若干乗り気で)そういった怖い体験を話してくれました。

僕と母には全くそういう感覚はありません。
しかし、妹の方は父の血を濃く受け継いだようで、たまに霊的なものを見ているようでした。(顔の作りもよく似ているw)

それは冬休みのある日のことでした。

僕が夕方遊びから帰ると、妹が自分の学習机の椅子に座り、何やら青ざめた顔でぼーっと真っ正面ばかりを見つめていました。

僕は直感で「ああ、こいつ何か見たんだな」とわかりました。
以前、父の田舎の山でクワガタ取りをしたときも、青ざめた顔で「山の上からおばあちゃんがみている」と言い、何も無い山の中腹あたりをぼーっと眺めていたことがあったからです。

僕は怖い話が好きだったので、もしかしたらすごい怖い話が聞けるかも知れないと思い、妹に「なんかあったのか?」の尋ねました。

すると妹は「なんでもないよ」と妙に嫌そうにはぶらかしました。
僕は余計に好奇心が抑えられなくなり、「嘘だー」とか「何があったの?」とか図々しい感じで食い下がりました。

妹は「なんでもない」「なにもないから!」といった感じで一向に要領を得ません。

僕は段々イライラしてきて、それまでの質問で「霊的な物」に関してはあまり突っ込んでは聞いていなかったのですが、「何をみたの?」と聞きました。

すると妹は突然ものすごい剣幕で「なんでもないって言ってるでしょ!!!」と怒鳴り、机に突っ伏してしまいました。

僕はその迫力に圧される形で引き下がらずを得ませんでした。

夜になり父が帰ってくると、僕は夕方あった出来事を父に話しました。

すると父はいまだに机に突っ伏したままの妹のところに行き、何やら会話をすると、僕の所に来て真剣な面持ちで語りはじめました。

ここからは父の話した内容を会話形式で書きます。
大分省略していますが、実際はもっと「人の嫌がることをするな」とか「しつこいと女の子に嫌われるぞ」とか教訓めいたことが沢山絡められていました。

父:「もうこれからは妹に『そういうもの』の話は聞くんじゃない。」
僕:「えーなんで?」

父:「お前はこの先、本当に怖いものをみることはないと思う。でもそれはとても幸せなことなんだ。」

父:「お前に今まで話した『怖い話』は俺にとってはそこまでのものじゃない。本当に怖い出来事というのは、絶対人には話したくないものなんだ。」

僕:「どうして・・・?」(この辺りからなぜかとても不安な気持ちになりました。)

父:「思い出してしまうからだ。妹はまだ小さいからそういうものにも慣れてないし、無理に聞こうとしても絶対に話さないだろう。」

僕はよくわからなかったのですが、とにかく今日妹に起きた出来事を聞きだそうとするな、と念をおされました。
それから妹にそういったものの話をすることはなくなりました。

それから少し経って、僕と妹が中学生になった時のことです。

中学生になり、恥ずかしながら僕は少し荒れていました。

しかし妹とは仲がよく、僕が部活をサボって家でゴロゴロしているとき等にくだらない事をよく話していました。

その日もゴロゴロしながらリビングで64のスターソルジャーをやりながら妹と話をしていました。

64をやっていたので、話題が小学生の頃の事になり、僕はふと父に念を押された時の事を思い出しました。

僕は中学生になり少し気が大きくなっていたことと、家族(特に父親)に対する理由も無い反抗心からずっと聞けないでいたことを妹に聞きました。

僕:「お前さあ小3のとき、俺が帰ったらなんかすげー怯えてた時あったよな」

すると妹はそれまでの朗らかな態度から一変して真剣な表情になり、急に黙り込んでしまいました。

「やっぱなんか見たわけ?」と僕は続けます。

妹は少し考えるような素振りを見せると、「もういいか」とつぶやき、こう続けました。

妹:「見た。」
妹:「話したくないけど、すごく怖かった。」

僕:「で、何をみたの?」
妹:「よくわからない、というかあまり覚えてない」

僕:「なんだよ・・・それならあんなに怯えなくてもよかったじゃん」
妹:「だって、まだあの部屋にいたから。」

僕:「え?」
妹:「話さなかったのは気づかないふりをしてただけ。」

妹:「○○(俺の名前)が『何見た?』って聞いたとき、”それ”がものすごい速さで○○の横に来たから私どなったの。」

僕:「なにそれw」(茶化してるけど内心ビビっている)
妹:「そういうものは、こちら気がつくと近寄って来る。だから、知らんぷりをするしかない。」

妹:「だから、怖い話なんてしたらダメだよ。」

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