おばけを踏んづけた話。
その道は昔街道だったらしい。
一応は一車線ずつあるんだけどとにかく細い。
歩道もなく、車道ぎりぎりに民家が並んでいる。
で、その玄関もほとんどの家が道路に面している。
そんな道を彼とふたりで、深夜のドライブで通りかかった時のこと。
時速40キロくらいで走行していた私達の車。
そのクルマのすぐ左前方、とある家の玄関あたりから、何かが道路に滑り出てきた。
モヤをぎゅっと凝縮したような、薄ぼんやり光ってるもの。
形は丸くて平べったかったかな。
大きさはサッカーボールより一回り小さい。
スーパーとかの白いビニール袋が、風に吹かれてスーッと地面を走ってくような感じの動き。
そいつは、私達のクルマの前で止まり、縦に長くなった。
彼とふたりで同時に叫んだが、すでにクルマはそいつの上を通過していた。
バンパーにはぶつかるくらいの高さはあったはずだけど、衝撃はなかった。
ほんとに一瞬のできごとだった。
すぐ振り返って見たし、一回りして現場に戻ったが何ひとつ落ちてなかった。
「道路わきの家で誰か亡くなって、その人の魂かも」なんて彼と話した。
別に怖くはない、ただ不思議な話。