その幽霊を追いかけていたモノ

私には幼い頃から何人かの『見えない友人』が居た。

幼い頃にそういう自分だけにしか見えてない友達が居るっていうのは結構よくあることだと思う。
だけど、私は中学生になっても高校生になっても”それ”が見えていた。

小学高学年ぐらいで「見えない友人がいるのは頭がオカシイ扱いされることなんだ」と気づいて周りには一切言わなくなった。
だが、幼い頃から中学にかけては6人、今は1人の『見えない友人』が、私のそばにいる。

我が家はごく普通の家庭環境ではあったけど、両親共に生真面目で、勉強面や礼儀作法、進路の面で激しく抑圧されていた。
だから、彼はてっきりその過程で生まれた、精神科の管轄の存在なのだと思っていたが、ここ最近、とてもただの妄想から生まれた存在とは思えない変な現象が起きるようになってしまった。

二年前の夏。
我が家を含むご近所さんは夜中になると何処からとも無く大騒ぎする声と、何かが燃える音とバイクの音が響き渡ることに困らされていた。
家族は若者が騒いでいるんだろうと警察に相談していたようだけど、その音の主は生きた人間ではなかった。

”彼”いわく、「アレはここから繋がる国道で事故を起こしたバイクに、君の友達の家に放火した男が相乗りしているんですよ」と。

そう言われるまで忘れていたが、私が小学生の時、確かに友人の家が数軒、放火されたことがあった。
そして、その友人の家は、すべて私の家の前を通る道から直接繋がる通りにある。

放火事件の犯人は自殺したという噂が囁かれてはいたが、まさか本当に死んでいたとは・・・と当時は驚いた記憶がある。
そして、自動車の修理工場で務めている友人の兄に聞いたところ、確かに近くの国道で数年前に大きなバイク事故があったのだそうだ。

無免許の改造バイクがガードレールにつっこみ大破し、更に其処に止まりきれなかった後続車がつっこみ更に大破という玉突き事故だったらしい。

”彼”がいうにはその改造バイクに乗っていた男女の後ろに、放火魔がくっついてまわっていて、彼らは毎晩大騒ぎしながら何かから逃げているみたいだという。

私:「え?そのバカなカップルは放火魔から逃げてるってこと?何で?」
彼:「違います。放火魔も逃げているのです」

私:「何から?」
彼:「わかりませんが、それは人です。」

私:「幽霊が知らない幽霊達を追いかけてんの?」

彼:「そういうことです。」
私:「幽霊の変質者ってわけ?w」

彼:「生きてた時、変質者だったら、死んでも変質者かも。私はわかりません」

私:「ふーん。でも、そこで関係が完結してるってことは、こっちには被害及ばないってことだよね」

彼:「はい。だから安心していい、今回の現象は、生きた人間はあまり関係ないことだと思います」

・・・といったような会話を”彼”と交わした。

そして数日後。

私は用事から帰宅した深夜、iTunesカードを補充するため自転車でコンビニに行こうとしていた。

そろそろ”あの現象”が起こり始める時間だとは思った。

当時私の自転車はライトが壊れていたが、街灯の光もあるし大丈夫と思い、イヤホンをつけ、さあ行こうとした瞬間。
「がっしゃーんばりばりばり!!!」という音があたりに響き渡った。

家から寝ていたはずの両親が飛び出してきて、近所の家からも人が出てきた。
それほど凄まじい音だった。

私は呆然と立ち尽くした。

しかし、辺りにはおかしなところは何もないし、近くで事故が起こったような痕跡もない。
その後、誰かが警察を呼んだらしく、交番のおじさんとパトカーが来ていたけど、結局何も見つからなかったそうだ。
そして、その日を境に、あの深夜のエンジン音や騒ぐ声、何かが燃えるような音は止んだ。

私はその理由を知っている。

あの日、私は騒音に呆然と立ち尽くしていたわけじゃない。
私の目の前に、血まみれの”彼”が突っ立っていたからだ。

謎の轟音の後、自室に戻ってすぐ私は”彼”を問い詰めた。

私:「あれはアンタがやったの?」

しかし”彼”は自慢するように言った。

「そうです。追いかけていたのは変質者ではなかったんです」

曰く、彼の言葉を信じるならば、暴走族と放火魔をお追いかけていたのは真っ黒焦げの円盤のようなもので、でもそれは人の霊だったらしい。
そして、彼はその円盤がしゃべるのを偶然聞いた。
「止まりなさい!警察です!」と。

更に良く見れば実際追いかけられていたのは暴走族と変質者だけではなく、もっと多くの何かの塊のようなものだったという。

大騒ぎするような声は、その塊の発していたものだったらしい。
円盤が警察だとすれば、彼は犯罪者を追いかけていたのだ。
暴走族と放火魔をはじめ、たくさんの悪い奴らの塊を追いかけていたのだ。

その後、自動車工場の兄ちゃんにせがんでこっそり聞いた話だが、暴走族の後続車に乗っていたのは、となり町に勤務している巡査だったらしい。
そして、その車からはどうしてもハンドルが発見されなかったため、とても不思議がられたのだそうだ。
あの円盤のように見えたのは・・・。

他にもいくつか経験しているけど、運転中にワープしたり予知夢見たりとかちょっと地味。
”彼”が今何をしているのかというと、私の横で、笑顔で、この文章を監修している。

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