霊感が強い人と一緒にいると霊感が移るって話は良く聞くけど、Nはよほど霊感が強かったのか彼の周りではけっこう多くの人がその犠牲になっていた。
だから霊的な話はNとその友達は結構持っている。
例えば彼の家に泊まりに行った友人Bの霊体験は、Nの家は土間があるような古い作りなんだが、部屋がある2階へいくには仏壇のある部屋の脇にあるかなり急な階段を仏壇を見下ろすようにしながら上らなきゃいけない。
夜も更けてNの部屋で寝ているとどこからともなくお経が聞こえてきた。
夜中にお経?
気になって廊下に出てみると、どうやらお経は階段の下のほうから聞こえてくる。
幽霊?と思ってビビリながらも気になってしまい2階から仏壇のある部屋を覗くと、なんとお婆さんが仏壇に向かってお経を唱えていた。
なんだお婆さんか、夜中にお経なんて人騒がせな・・・と、かなりビックリしたけど、とても眠かったのでそのまま布団に戻って寝た。
翌朝、起きてNに「夜中にお婆さんがお経を唱えていてビックリしたよ」と言うと「えっ婆ちゃん?去年に亡くなったよ。ああ、また出たのかあ」と。
Nにとっての日常はこんな感じらしい。
でも元々が怖がりで幽霊に慣れることはないそうだ。
害を与えてこないでただそこに居るだけの霊ならまだしも、寝ているときにふと目を開けたら目の前20cmくらいのところに女性の顔があったりするのはめちゃくちゃ怖いと嘆いていた。
でも、そりゃ誰でもビックリするよね、急に顔がそんなに近くにあったら。
さて、ここからは私が体験した話。
春先にNを含む友達5人で有名な心霊スポットへ肝試しへと行ったときのこと。
山越えの曲がりくねった細い道に古びたトンネルがある旧道と、その山の中腹にある神社はどちらも昔から出るとかなり有名。
そして十数年前に新トンネルが出来たけど、ここも色々と霊にまつわる話が多いところだ。
男5人が車2台に分乗して新トンネルの脇から旧道へ入り曲がりくねった山道を進み、神社への入り口となる石段の前に車を止めた。
連れのうち二人はまったく暗闇や幽霊が怖くないらしく「ヒャーヒャー」言いながら石段を駆け足で登っていった。
普通に暗闇や幽霊を怖いと感じる私と真面目なC、それと余計なことをして幽霊を怒らしたくないと言うNの三人は石段の下で二人が戻ってくるのを待つことにした。
しばらくするとNが「なんか喋った?」と聞いてきた。
二人とも黙っていたので「いいや」と答えると「なんか聞こえる。ああ近くに居る!」と。
「階段のところいない?」とNが指差したその先には全身が月明かりで照らされた人のような、白っぽく見える人が座っていた。
押し黙る三人白っぽく見える人。
見間違いであって欲しいと願う。
私「人が座っているように見えるけど」
C「男の人っぽいよね」
私「年は20後半くらい?」
C「そ、そんな気がする」
どうやらお互い見えているのは同じもので間違いなさそうだ。
しばらくしてもう一度石段を見るとその姿はもう消えていた。
Nの話では危害を与える感じではなさそうだけど、早く立ち去ったほうがいいようだ。
あの二人はまだか、もう置いてこうか・・・なんて話しながら待っていたら二人が戻ってきた。
二人には「幽霊が出たからもう行こ!」とだけ伝えて急いで車に乗り込み、前の車はNが、後ろの車は私が運転して新道へと車を走らせた。
新道と交わる交差点の角には公衆電話のボックスがあり、不気味な緑色に光って辺りの真っ暗な闇をほんのりと照らしていた。
左右を見て安全確認しているときに、その電話ボックスの中に髪の長さが1mはありそうな女性の頭がハッキリと見えた。
「ウワーッ!」
気が動転していた私はマニュアル車なのにシフトアップを忘れてギアを1速に入れたままアクセル全開。
エンジンは『ウ”ォヲオオオオオオンオンオン』と悲鳴を上げる
助手席からBが「どうした?シフトアップは?シフトアップしろって!」と叫びようやく2速3速へとシフトチェンジ。
前の車に追いついたところでライトをパッシングし車を止めさせて今見たことをみんなに話した。
「そんなのいたかー?」
「よし確かめに見に行こうぜ」
石段を駆け上がったアフォな二人はなんか嬉しそう。
戻るのは嫌だったけどみんな行くと言うし、置いて行かれてはたまらんのでみんなで見に行くことに。
するとそこには長い髪のカツラをつけたマネキンの頭の部分だけが電話機の上に置いてあった。
なんてことはない性質の悪いただの悪戯ということが分かりホッとした。
初めて幽霊を見た怖さは今もしっかりと記憶に残っているが、それよりもあの不気味なマネキンを見た時の怖さといったらもう・・・。
マネキンにビビッたのは今は笑い話だけど、あのリアルさは本物の幽霊よりも本当に怖かった。