引っ越し先の訪問者

カテゴリー「心霊・幽霊」

いわくつき物件の話。

俺は一年前から不動産の仕事をしている。
主な仕事は部屋の紹介など。
そこの不動産会社は高校の部活の先輩、渡辺(仮名)さんが勤務していて、そのつてで紹介してもらった。

ある時、二十代ぐらいの男性が部屋を探しに来た。
その男性、巻田(仮名)さんから『いわくつきの物件』を紹介して欲しいと言われたのだ。

突然の事に要領の得ない俺の様子をみて、先輩の渡辺さんが間に入ってくれた。

「お客さん。そうゆうものをお探しならこちらへ。」

「後は俺がやるから大丈夫だ。」

巻田さんが帰った後、渡辺さんが事情を話してくれた。
渡辺さんによると時々、巻田さんのように、いわくつき部屋を狙ってやってくる客がいるのだそう。
目的は大体二つに別れていて、一つは怖いもの見たさや興味本位でもう一つは家賃が安いからとの事。

巻田さんは後者だった。

この仕事をしていれば、いわくつきの部屋というモノにいつかはぶつかるのだと思っていたが、まさかそこに自ら住みたいという人がいることに驚いた。

しかし渡辺さん曰く、巻田さんの様に自らすすんで部屋に住みたい人は少なくないのだという。

「霊とかオカルトを信じない人にはただの格安物件だからな。」と渡辺さんは笑いながら話していた。

興味を持った俺は巻田さんに紹介する部屋の事について聞いてみた。
その部屋は一人暮らしの二十代の女性が半年くらい前に自殺した部屋で、事件後は誰も借り手がついていない物件だった。
実際に部屋を見てみたくなった俺は巻田さんの担当を代わってもらい、二日後に巻田さんと共に部屋を見に行った。

部屋に行く途中、巻田さんと話をしたのだが、彼は霊などのオカルトは全く信じていないようで以前にもいわくつきの部屋に住んでいたという。
その時も特に霊体験をしたことはなかったそう。

アパートは築八年ほどの二階建てのごく平凡な建物だった。
以前は近くにある機械の部品組み立て工場で働く一人暮らしの派遣労働者がほとんど入居者だったようだが、不況の煽りを受け派遣切りがあったので、今ではアパートの入居率は2割ほどしかいない。

目的の部屋は道路から入って一階の一番手前の場所だ。
ドアを開けて中を見たのだが、何の変哲も無いワンルームの部屋だった。
巻田さんからも特に意見がなかったのでその日のうちに契約が成立し、次の週には入居した。

しかし巻田さんが部屋に住んで一週間ぐらいが過ぎたとき、突然彼から苦情の電話が来た。

巻田さんの話によれば、彼が夜中に寝ていると突然『ドンッ!ドンッ!』という大きな音で起こされたという。
飛び起きてドアのほうに向くと部屋の外で男が何か怒鳴ったりドアをたたいたりしていたそう。

こういった苦情は良くある事で「どこかの酔っ払いが騒いでいるのだろうから大丈夫ですよ。」と彼をなだめるように説得した。
巻田さんもしぶしぶ了承してその場は収まった。

しかし、それから二週間ぐらいが経ってまた巻田さんから以前と同じような事が起きたとゆう連絡を受けたのだ。
俺はただ事ではないと思い、彼にに直接会って話を聞きくことにした。

それによると巻田さんはその日の夜、二時ぐらいまでゲームをしていた。
すると突然どこからか革靴のコツコツと鳴る足音が聞こえてきたのだ。
足音はだんだんと近づいてきて部屋の前まで来ると止まり、その後ドアを激しく叩く音が聞こえ、それと同時に男の怒鳴り声が聞こえてきたという。

男は「いい加減にしろ!」や「もう俺に付きまとうな!」などと言っていて、十分ぐらいそれが続いた後、静かになったということ。

霊とかオカルトが平気な巻田さんもこれには参ったらしく青ざめた表情を浮かべていた。
警察に通報しようかどうか考えたが、またその男が来るかもしれないので、その時に通報して現行犯で捕まえてもらうことにした。
そしてさらに二週間後にまた男が来たのだ。

夜中の一時過ぎあたりに俺の携帯電話が鳴る。
巻田さんからで、電話に出ると巻田さんが興奮気味に「来た来た!聞こえるでしょ!」、そう言うと携帯電話を玄関に向けたらしく、コツ、コツと革靴が地面を叩く乾いた足音が聞こえる。

足音はだんだん大きくなっていき、しばらくして突然止まったのだ。
少し間をおいて『ドンッ!ドンッ!』とドアを激しく叩く音が、それと共に男の怒鳴り声が聞こえた。

「ひぃっ!やっ・・・・・やばい!」

巻田さんの押し殺した悲鳴のような声が携帯を通して聞こえてくる。

「こっ・・・・・これはもう警察でしょ!」

「わかりました警察に連絡してください。俺もそっちに行きます。」

電話を切り、部屋着であるジャージ姿のままで俺は自宅を出た。
巻田さんの住むアパートまでは俺の自宅から自転車で十分位の所にあり、急いで現場に向かった。

アパートの隣接する道路まで来て遠目に部屋を見るとアパートの電灯の中に人影が見える。
自転車を降り、静かに歩いてアパートの入り口まで来ると、そこには黒い薄手のジャンパーに青色のジーパン姿の男が巻田さんの部屋の前で何か怒鳴っているのが見えたのだ。

警察はまだ来ていなく、どうしようか迷って立ち尽くしていると男が不意にこちらに顔を向けた。
男は人がいる事に気づいて驚いたが直ぐに顔を隠すように俯き、こちらに向かってくる。
そして入り口で立ち止まっている俺の脇をすり抜けるように男は立ち去ろうとしていたので、逃げられると思い咄嗟に男の腕をつかんだ。

男は俺の手を振り払い逃げ出そうとしたので今度は男の腰にしがみついた。
その拍子に男は前のめりになり、地面に俺と共に倒れこんだ。

男はすぐに立ち上がったのだが、そのさいに片方のスニーカーが脱げた。
しかし、そのまま逃走。
俺も残ったスニーカーを掴み、後を追いかけたが途中で見失ったので追うのをあきらめ一旦アパートに戻った。

戻ると警察官が来ていて巻田さんと話していた。
俺が事の次第を警察官に話していたが、その途中で男が他の警察官に捕まったと連絡が入ったのだ。

その後、警察に行き事情聴取をされた男は素直に犯行を認めた。
俺は警察官から男の素性について聞いて驚いた。

男は巻田さんの部屋で自殺した女性と知り合いだったのだ。
以前、男は女性と付き合っていたがしばらくして別れたとの事。

しかし女性の方が未練があり、ストーカーになってしまったのだという。
女性はその後自殺、男も女性からの激しいストーカー行為に心を病んでしまい、病院の精神科に通院していたよう。

巻田さんの部屋に行った動機に関してはあいまいな事を言っていて良く分らないとのこと。
結局、男は家族に向かいに来てもらい、そのまま実家で療養することに。
事件はとりあえず解決し、巻田さんも一安心した様子で別れた。

翌日、仕事に行き渡辺さんに昨日の出来事を話した。

「幽霊の正体見たり、ですよ。」

俺は得意そうに言い「いわくつきの物件は出る出るというけど、まあ大体現実はこんなもんだよなぁ。」と二人で笑っていた。

ところが男が捕まって三日後に巻田さんから連絡があった。
聞くと部屋をすぐに解約して欲しいとの事。

理由を問いただしたのだがあやふやな態度をとられてしまいどうにもならないので、俺は本人に直接会う事にした。

巻田さんのところに行くと、青白い顔をした本人が待っていたのだ。
解約の理由を俺が問い詰めると巻田さんがうつむき加減に理由を話してくれた。

一昨日、男の姉が巻田さんに謝罪に来てくれたのだとゆう。
そして男の奇怪な行動について話してくれたのだ。

姉が男から聞いた話によると男は彼女が自殺をした後、部屋に篭りがちになっていたそう。
しかし夜になると誰からか見られているような不安な気持ちになる。
気になって窓から外をそっと覗いてみると、近くの道路に死んだはずの彼女がこちらを見て立っていたのだそう。
女性はしばらくそのままでその後、どこかに去っていくのだという。

毎日それが続き、我慢できなくなった男は彼女の後を追うことにした。
彼女に気づかれないよう静かに後を追うと巻田さんの住んでいるアパートに行き着いたのだ。
しかし彼女は部屋の前まで来ると姿は消えてしまう。
彼女が部屋に入ったのだと思って、部屋の前まで忍び寄り、様子を伺うのだがどうにもならない。
どうにもならないイライラが死んでまで自分に付きまとう彼女に対する怒りに変わり、男は発作的にあのような行為をしてしまうのだという。
そういう行動を何週かごとに繰り返していたようだ。
神妙な面持ちで話をする巻田さんを見て俺は少しあきれた。

確かに気持ちの悪い話ではあるのだが男は精神を病んでいたので幻覚を見ている可能性があるし、なによりも心霊やオカルトを信じていないはずの巻田さんがそんな話を鵜呑みにするのはおかしいと思ったからだ。

そんな俺の気持ちを感じたのか巻田さんが「実は昨日の夜・・・・・。」

「えっ!また男が来たんですか?」

反射的に俺が聞くと「いや・・・・・違うんだけど・・・・・やっぱいいです。」と何か歯切れの悪い返事。

腑に落ちず、さらに聞こうとしたが彼のあまりに青ざめた表情を見て気の毒になり、それ以上の話を聞くのをやめた。

結局、巻田さんは次の部屋が見つかるまで知人の家に泊めてもらうことで終わり、彼と別れた。
実際に自分が心霊現象にあったわけではなく、あまり怖い話ではないが、いわくつきの部屋にはこうゆうトラブルもあるといった話。

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