ほんのりな話。
歳の離れた弟がいる。
その弟が赤ん坊の頃から、祖父の家で入ると必ずぎゃんぎゃん泣く部屋があった。
普通の客用の寝室ではあったけれど、客は無く物置も兼ねてた(親類は使わなかった)。
泣くので仕方なく弟とは隣の仏壇の部屋で寝ていた。
俺としてはこっちの方が怖かったが弟はいつも静かに寝てた。
弟が五歳くらいになった頃、その仏壇の部屋で寝ていた時、夜中に目が覚めた。
仏壇には何故か蝋燭に火が灯り、読経が聞こえてきてびっくりして飛び起きた。
「○○(俺)寝とっていいよ」と言われて、仏壇を見ると弟が数珠を下げて、読経してた。
まだ漢字も読めないのに。
「ちょっと、説教してくるからな。気にしなくていい」と言って、そのまま隣の部屋に入ってく。
低い男の怒鳴り声と、女の悲鳴が聞こえて、弟が部屋からでてきた。髪の長い紺色の着物の女の髪を掴んで。
勿論ちっちゃいから、めっちゃ引きずってるけど重さなんて気にしてないみたいに、玄関を開けて、放り出した。
「これで大丈夫」と弟は笑って、蝋燭の火を消して、布団に潜った。
俺も玄関が怖くて、慌てて布団に入った。
翌朝、弟に聞くと何も覚えてなかった。
祖父に話すと、客用の部屋の箪笥から着物を取り出して見せてくれた。
俺のひい爺さんが拝み屋らしき事をしていたそうだ。
そのひい爺さんが亡くなってからも、親類から呪わてるという着物や品が預けられていたらしい。
ひい爺さんの子供だから払えるだろうと。
しかし祖父も俺の親父も俺もさっぱり見えない、感じない、影響がなかった。
それで放置されていたのだそうだ。
「ひい爺さんが(霊を)不憫に思って払ったのかもな」と祖父は呟いていた。
どう考えても笑って髪掴んでたし、不憫には思って無かったようだしし、俺も見えちゃったんだけど・・・・・・と疑問は持ちながら、それ以上はツッコミ入れなかった。
あれからもう二十年くらい経つけど、ひい爺さんらしき霊に憑依されてるのか、弟がたまに奇行に走ったり、俺が変な目に合うのはこれが原因だと思っている。
ほんのりっていうか、愚痴かも。
女の霊があの貞子より髪の毛ボサボサで怖かったのが忘れられない・・・・・・