以下、聞いた話。
城○町のとある神社で、真夏にA~Dの四人で肝試しをやる事になった。
肝試しに行く前に怖い話をしてから行く事となったが、その中の一人(A)はどうしても怖い話が思いつかなかった。
元々、この四人は仲が良い訳ではなく、どちらかと言うとAは苛められていた。
この怖い話が思いつかなかったAはこの三人が嫌いだったが、学校で臆病者呼ばわりされて苛められるのだけは、どうしても嫌だったので、ネット等から怖い話を集めて自分で怖い話をでっち上げようとした。
勿論、『花子さん』とか、『ターボババア』等と言う、メジャーな話は論外だったので、友人に情報を貰いながら、数日掛けて話を作った。
それは、見た者をずっと追いかけてくるお化けの話。
幾つかの話を継ぎ接ぎにして、神奈川の地元ネタを仕込んだ事で、なんとなくリアリティーが出たように感じた。
その話は、満月の夜にその神社の傍にある森(肝試しの場所)の中で死んだ女が、同じ時刻にその
場所にいる人間を引き込もうとするもので、見つけられたら最後、追いかけてくると言う。
それだけなら、単なる憑依で御祓いすれば良いじゃないかと言う事になりかねないので、森から出られないと言うオマケもつけた。
つまり、見つかったら森から出られず、死ぬまで追いかけられる。
で、都市伝説の常として、助かる方法も付け加えておく。
その女が引き込むのは一回に一人。
複数で行った場合、誰かを生贄にすれば自分は助かると言う物だ。
肝試しの前の話は、基本的に三人とも当たり障りのない話で、Aは色々調べていたおかげで、怖くも何ともなかった。
Aの話だけは当然聞いた事がある奴はいないので、静まり返ったが・・・。
もっとも、この時この三人はAを落としいれようとして森の中に予め別の仲間を配置しており、Aを驚かせて其れを写真に撮ろうとしていた。
そうとも知らないAは、これで肝試しをして終わりだと考えていた。
しかし、森に来た四人はそこで、地面に這い蹲っている人を見つける。
こんな夜中に?
四人は、恐る恐る近づく。
なんと、そいつはBCDの仲間で森の中に配置されていたはずの奴だった。
ガタガタと震え、失禁したそいつは四人を見ると悲鳴を上げて逃げていく。
その後、警察やら救急車やらが集まり、肝試しどころの騒ぎではなくなった。
入院したそいつは、精神に異常をきたし(PTSD)訳の判らない言葉を呟いている。
「助けてくれ・・・・・・」
ずっとその言葉を繰り返すだけとなった。
自分達の関与がばれる事はなかったが、三人はAの話を思い出して内心震えた。
森に配置した人間は2人なのに、残りの奴は今も行方不明だった。
Aを問い詰めるBCDだったが、話自体作り話に過ぎないので、何ともいえなかった。
その後、B・Cも神社の近くで見たと言う目撃情報を最後に行方が判らなくなる。
Aはとっくに気がついていた。
あの時、森の中に入ったのはBとCで、AとDは足がすくんで動けなかった。
それは、泣き叫びながら逃げ惑う奴を追うB・Cをじっと見つめる黒い影がある事に気がついてしまったからだ。
真っ赤な瞳のない目だけが、森の暗がりからBとCを睨み付けている。
神社の神主は、Aに相談を受けて卒倒しそうになったと言う。
Aは自分でも気がつかないうちに(恐らく無意識)、この神社に伝わる封じられたはずの怨霊を、口に出す事で目覚めさせたと言う事だ。
100年近く前に漸く鎮めた物を再度封じる力なんて、今の神主にある訳がなかった。
そういう訳で、この森は事件があったとして立ち入り禁止になり、柵で囲まれている。
こうする以外になかった。
しかし、この噂を聞きつけた者が、この森に入って行く事だけは防ぎようがなかったのも事実だ。
毎年、この城○町ではこの付近で行方不明になる人間がいるというが、神奈川だけでも毎年何人も
行方不明になっているので、一人二人居なくなっても新聞にも載らなかった。
子供ならいざ知らず、大人が居なくなってもそう騒がれたりしない。
Aはその後直ぐに引っ越し、以降行方が判らない。
Dは毎晩うなされる様になり、その事件の翌年自殺したと言う。
何かに怯えながら引き篭もったままだったので、ノイローゼで自殺とされたようだ。
行方不明が何人も出た事をネタとした怪談話だと思うが、実際、行方不明となった者は今現在誰も発見されていない。