幽霊なめてたヤツ

この話は正確には私の体験談では御座いません。
私が中学生時代に通っていた学習塾の友人の体験です。

その体験について相談された私は『あるもの』を抑える事が出来ませんでした。
その『あるもの』とはいったい?
この話を読まれる方に一つ。
体験者であるG君(仮名)はいたって正常で嘘のつけない男である事をお忘れなく・・・。

上記しましたが中学生当時、私は学習塾に通っておりました。
その学習塾内に於いても、私の霊体験は結構知られておりました。
休み時間になると塾生達が私の話を聞きに来ていたものです。

その中にはG君もおりました。
他の塾生たちが私の話に恐怖と驚きの声をあげる中、G君はいつも私にこう言っておりました。

G君:「馬鹿じゃねぇの!霊なんているわけねぇじゃん!?おまえの嘘話はもう聞き飽きたよ!」

もちろん私の体験に嘘、偽りはおろか、脚色も御座いません。

しかしながら霊の存在を信じていない方に信じろと言うほうが無理な話。

私:「信じたくなければそれで構わないよ。」

G君にも常々申しておりました。

そんなある日、そのG君が血相を変えて私の元にやって来たのです。

G君:「お前しかいねぇ!!俺の話を信じてくれるのはお前しかいねぇんだ!!」

涙ながらに訴える彼に気圧された形で、私はG君の話を聞く事にしたのです。

その日、G君はいつもと変わらぬ一日を終え、寝床に就いたのだそうです。
眠りに就いてから二時間程した頃。
G君は妙な感覚に陥って目を覚ましたのです。

閉まっていたはずの窓の方向から生暖かい風がG君の頬を撫でるのです。
G君は恐る恐る窓の方へと向かいました。
しかし、戸締りをしたはずの窓は当然のごとく閉まっており、G君がカーテンを開けた時には生暖かい風も止んでいたのです。

気のせいだったのだろうとG君は再び寝床に入りました。
すると、いままで自由に動いていた体が一瞬にして凍りついたかの様にまったく動かなくなってしまったのです。
指の先一本でさえも動かす事ままなりません。
いわゆる『金縛り』です。

目を閉じる事も出来ない彼の目に映ったのは世にも異常な光景でした。
天井の木目がグニャリと歪み、水滴が落ちるかのごとくG君の顔面に向かって来るのです。
そしてあろう事かその落ちてくる天井が人の顔の形を成していったのです。
年の頃は五十代。

脂ぎったその顔に付いている二つの眼の片方(どちらだったかは記憶していません)はケロイド状に潰れ、正視に耐えるものではありませんでした。

G君の意思とは裏腹にその顔はG君の目前まで迫って来たのです。
G君の鼻っ柱に当たるか当たらないかの位置でピタッと止まった霊の顔。
合せたくない目線を合せずにいられない状態のまま4、5分が経過しました。

いや、実際にはもっと短かったのかもしれません。
しかしG君には1時間にも2時間にも感じられる程のものであったと推測できます。
そしてついに男の霊が口を開いたのです。

ドスのきいた野太い声で男の霊はG君にこう言ったのです。

幽霊:「あんまり幽霊なめてんじゃねぇぞ!!」

男の霊はそれだけ言うと一瞬にしてG君の眼前から消え去り、金縛りも嘘の様になくなったのです。

G君:「お前しかいねぇ!!俺の話を信じてくれるのはお前しかいねぇんだ!!」

悲痛な彼の叫びの中に偽りは感じられません。
そして私はG君にこう言ったのです。

G君:「信じる。信じるよ。」

しかし、そうは言ったものの私は『あるもの』を抑える事が出来ませんでした。

もうお分かりですね?『笑い』です。

G君の話を信じてはいるものの笑いが込み上げてきてどうにも抑えられませんでした。

G君:「お前ならと思って真剣に話したのに!!もういいよ!!」

G君は激怒して私の元を去って行きました。
この場を借りて改めてG君に謝罪します。
笑ってすまなかったG君。

君が見たのは間違いなく霊だったのだろう。
・・・・・しかし、霊に脅されるって・・・・・。
この話を執筆中もやはり抑えられませんでした。
『笑い』を。

失礼・・・・・。

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