死んでも家に棲みつく

カテゴリー「心霊・幽霊」

友人から聞いた話です。

何年か前、友人のお祖母さんが長い間病床に伏していましたが、とうとう亡くなってしまいました。
実は、友人も含めて、家族の人間はお祖母さんことがあまり好きではありませんでした。

お祖母さんの実家は名家で、何不自由なく育ってきたので、とにかく我が儘だったからです。
友人のお母さんは嫁いでからいじめられ放題だったということでした。

病に伏しているお祖母さんの世話も大変だったようで、私がお会いした時は、それはもうげっそりしておられました。
ですので、正直家族中が、お祖母さんの死を喜ぶとはいかないまでも、何か重い荷物から解き放たれたような感覚だったといいます。

四十九日が過ぎ、家族はお祖母さんのことを徐々に忘れるようになりました。
そんなある日、お父さんが『お疲れ様』の意味を込めて、お母さんを何日かの気晴らし旅行に出たそうです。

家に残ったのは友人一人。
当然のように仏様のご飯(仏壇に供える物)や水の入れ替えを頼まれた訳ですが、友人は結構いい加減な人間で、しっかり務まるわけがありません。
そんな感じで一日、二日と経っていきました。

友人が二階でゴロゴロしていると誰もいないはずの一階で、『ガタガタ、ガタガタ・・・・』と物音がするのです。

誰か来たのかと思い、下に降りて玄関を見ても誰もいません。

『ガタガタ、ガタガタ・・・・』

物音はどうやら、奥の部屋(仏間)からすることに気づいた友人は、奥の部屋に行ってみました。
奥の部屋に入るとピタっと音が止みました。

不思議に思いながら、ふと仏壇を見ると、立ててあったお祖母さんの写真立てがうつ伏せに倒れています。
隣には既に無くなったお祖父さんの写真立てがあるのですが、それは何の変化もありません。

ともかく友人は写真立てを直し、二階に戻りました。

しばらくするとまた、『ガタガタ、ガタガタ・・・・』と音がします。
再び友人は下の仏間に行ってみました。
するとまたお祖母さんの写真立てだけが倒れています。
写真立ての後ろを見ても何もいないし、おかしいと思っていると、『ガタガタ、ガタガタ・・・』と部屋の中から音がします。

何の音かと見回してみると、タンスの上に置いてある木の箱から音がしているようです。
気持ち悪いと思いながら友人はタンスから箱を降ろしてみました。

確実に何かが中にいるのがわかりました。
友人は恐る恐る箱を開けてみると、そこから・・・・白いネコが飛び出してきたのです。

そのネコは近所でよく見る野良ネコでした。
友人は驚き大きく仰け反りましたが、箱から開放されたネコは我関せず、部屋を飛び出していきました。

友人はしばらく呆然としてましたが、落ち着いて、頭の中を整理しようとしました。
だれが、いつ、なぜ、ネコを箱に閉じこめたのか・・・・。
家には友人以外誰もいないし、両親がそんな悪趣味なことをするだろうか・・・。

そんなことを思っていた友人は、ふと、仏壇に目をやりました。

「ばあちゃんの仕業・・・?」

友人は一瞬そう思いましたが、頭を振って、否定しました。

「そんな訳はない。ばあちゃんはもうこの世にいないんだから・・・・。」

その時です。

「ここにいるよ・・・」

それは・・・明らかにばあちゃん声でした。

恐怖で部屋を出て、家を出た友人は、その後御両親がお帰りになるまで、他の友人(私も含め)の家を転々としていました。

結局、御両親がネコを箱に閉じこめた事実もなく、御両親の帰宅後からは何も起こらなくなったそうです。

友人は、お祖母さんが寂しくて、あんなことをやったのかもしれない、と今では振り返っています。

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