警備の巡回業務で見た飛び降り

カテゴリー「心霊・幽霊」

大学の施設警備やってたんだけど、巡回業務があるんだよ。
使っていない教室を点検したりとか、施錠されてるかとか、夜間巡回とか。

夜間の巡回中に本館から少し離れている研究棟の巡回をした時。
この時間だったら入り口も施錠されてもう誰もいないはずなのに、中に入ったら、誰かいるんだよ。

中は薄暗くて顔もハッキリ見えないくらいで、おかしいなと思った俺はその人に「どうしました?」って声かけたの。
そしたら、その人は俺を無視して階段を昇り始めたんだよ。
不審者だと思った俺は防災センターに無線で連絡して、そいつの後を追い始めた。
だいたい15mくらい間を空けてずっと後をついていったら、そいつは階段を最後迄昇りきって屋上に出て行った。

屋上はいつも施錠されていて、外に出る時は絶対に鍵を開ける音がするはずなのに。
その音がしなくて、おかしいなと思いつつも俺はそいつの後から屋上に出た。

そこで見たものは、柵(俺の顎くらいの高さ)の前にきちんと揃えて置かれた、男物の一足の靴。
それと柵の向こう側に立っている男の背中だった。

で、そいつがいきなり消えたんだよ。
飛び降りたと思って驚いてそこに駆け寄って柵の隙間から下を見ると。
地面には人間が横たわっていた。

ここ迄はただの飛び降り発見で済んでたんだけど、後から変な話になってきたんだよ。
警察で俺は第一発見者として事情聴取を受けたんだけど、検死結果と俺の話が見事に噛み合わないの。

どういう事かと言うと、死亡推定時刻が、俺が発見する八時間も前だったんだってさ。
何度も警察にも説明したんだけど、俺は絶対に途中でそいつを見失ったりしてないんだよ。
そいつが消えたのも見てるわけ。

ただ、思い返してみると地面に衝突する音とかを聞いた記憶が無い。
そいつはその研究棟に入っている研究室に所属してる院生。
個人的な事情で随分前から悩んでいて精神科にも通院してた。
事件性は無しって事で俺もそれ以上は疑われたりはしなかったけど。

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