いつもの事よ、気にしないで

カテゴリー「心霊・幽霊」

ニュージーランドをバイクで旅したんだ。
南島にダニーデンって町があって、そこのユースホステルは、幽霊が出ることで有名なんだ。
そこの建物は50年前病院だったらしい。
石造りのりっぱな建物だったよ。

話のネタにと思って泊まってみた。
部屋は8人部屋20畳位の広さ。
で、霊が出るって噂のTVルームに行ってみた。
そこは、地下にあり元霊安室。

まず、TVルームに行くには両側ドアで仕切られ密閉された廊下に入らなくてはいけない。
まだ霊安室(TVルーム)でもないのに味のある雰囲気をかもし出している。
そこから暗い階段を一段一段降りていくと霊安室だ。

ドアに[「TV Room」と書かれている。
このドアを本当に開けてもいいものか少し迷った・・・。
でも、何のためにここに泊まったかを考えると開けざるを得ない。
意を決して開けてみた。

中は薄暗い。
天井近くに明り取りの小さな窓があるだけで電気はついてなかった。
それ程広くは無い。

10畳位だろうか?ソファーが3列並んでる。
一番前のソファーに金髪の少女が座っていた・・・。
彼女はこの暗闇で読書をしている。
すごい度胸だ・・・。
こっちはかなりビビッテルのに・・・。

その少女の後ろのソファーに腰を下ろすために彼女を通り過ぎた。
その時に見てしまった。
彼女の座ってるソファー・彼女の尻の下に濡れたようなシミがある。

その時やっとわかった・・・。
奴は幽霊に違いない・・・。
でも彼女は、何もリアクションを起こさない。
オイラを金縛りにするとか何とか・・・。

そして、10分ぐらいが過ぎ彼女は部屋を後にした。

助かったのか?
彼女の座っていたソファーを見ると確かにシミはあるが、かなり前の物の様だ。
彼女は生きている人間だったのか?
はっきり言って今でも彼女が「どっち」だったのか、わからない・・・。

幽霊屋敷で2日が過ぎ3日目、昨夜までは8人部屋に4人位泊り客がいたが、今日は、このだだっ広い部屋に自分一人。

出るなら今夜だ。
ベッドに入ってもなかなか寝付けなかった。
でも知らないうちに寝てしまったようだ。
しかし、このまま朝まで眠ると言う幸福を自分は与えては貰えなかった。

夜中の三時か四時、ピアノの音で目が覚めた。
こんな時間に誰かがピアノを弾いてる。
しかもへたくそじゃないか・・・。
推測するに子供が弾いているものと思われる。

その音は、ポロポロと片手引きで時々つっかえる。
その下手さが余計恐怖心をあおる。
まるで、病気の子供が弾いているようだ。
”私の最後の演奏を聞いてくれ”と言わんばかりに・・・。

確かめに行く勇気なんて無い。
ピアノの部屋は霊安室に行く密閉された廊下を通らなくては行けない。
ピアノの音以上の事が起こらなければいい、と思いながら30分くらい聞いていただろうか。
気が付くと朝だった。

朝、受け付けの女性に「昨夜ピアノの音が聞こえたんだけど・・・」と言うと、彼女は軽く「いつもの事よ。気にしないで」と言ってのけた。

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