夜の十一時半くらいかな。
バイトが終わって自分の住んでるマンションのエレベーターに乗った時の話。
俺の部屋は三階。
電子盤の3のボタンを押したとき、電子盤の下に長方形の小さな鏡があることに気がついた。
普通エレベーターに鏡があるのはエレベーターの後ろだ。
こんなところに鏡なんかあったっけ?と思いながら鏡を眺めてたら、エレベーターの個室の右後ろに通路があるみたいになってるのよ。
エレベーターの箱なんて大抵正方形か長方形。
隅っこにちょこんと通路が伸びてるなんてありえないんだけど、でも通路があるみたいになってた。
で、その通路からチラチラ白い服の裾みたいなのが見えてるのよ。
不思議に思ったけど、それ以上は何も考えなかった。
エレベーターのドアが開いたから。
でも、よく見たらそこは五階だったんだ。
俺の部屋は三階・・・。
俺はちゃんと三階のボタンを押したはず。
でも五階に止まった。
まぁ、そういうこともあるだろうと思って、三階を押しなおした。
その時、また鏡が目に入ったんだが、俺はとんでもないものを目にした。
さっき言ってたあるはずのない通路から白いワンピースを着た若い綺麗な女の人が出てきた。
・・・いや、それは・・・おばさんだった。
白いワンピースを着たおばさんが出てきた。
で、そのおばさんなんだけど、目を閉じてるのよ。
目を閉じてるというか、目のあるはずの場所が手術跡みたいになってる。
そのおばさんを見た途端、「これは見ちゃいけないものだ!!」と思って、俺は反射的に目を閉じてその場にうずくまった。
エレベーター、まだ三階に着いてないし。
そしたらそのおばさんがうずくまってる俺の両肩を叩きながら「ねぇ!?なんで目閉じてるの!?ねぇ!?ねぇ!?なんで!?なんで閉じてるの!?ねぇ!?ねぇ!?ねぇねぇねぇねぇね」と狂ったように喚き散らしてきた。
怖いとか感じなかった。
ただ、目が覚めた。
どうやら夢だったらしいんだけど、目が覚めた途端に、「キィーンッ!」って耳鳴りがして、体がぶるっと震えたんだ。
で、体が痺れたように動かなくなった。
金縛りとかあんま詳しくないし、よく分からないんだけど、これが金縛りっていうのかな?
手足は動かなかったけど、目だけは動いた。
俺は寝る時いつもオレンジ色の豆電球つけて寝てるんだ。
だから部屋は真っ暗じゃなくてちょっとは明るいんだけど、目を開けてみるとなんかの影が覆いかぶさってて視界が暗いのよ。
それが何かなんて確かめる勇気は無かった。
だから目をつぶって寝ようと思ったんだけど、「ねぇ!?なんで寝てるの!?ねぇ!?ねぇ!?なんで!?なんで寝てるの!?ねぇ!?ねぇ!?ねぇねぇねぇねぇね」と、俺の肩を叩きながら耳元で狂ったように喚き散らしてた。
あのおばさんの声で・・・。
怖いっていうよりうるさかったな。
とにかく目つぶって耐えてた。
気が付いたら朝になってた。
とりあえず、母親に朝の挨拶。
ちなみに今朝の話。
まったく意味が分からん。
おかげで寝不足で頭痛い。
勘弁してくれ。