偶然が重なりすぎる

カテゴリー「不思議体験」

目的もなく雑貨店をウロウロしていたら、レジで支払いをしている客の顔にふと目がとまった。
あれ、この人知ってるぞ、誰だっけ?

『そうだ先月紹介してもらった、Tの知り合いのえーと・・・Nさんだ。』

友人の知人、特に親しい仲に発展していた訳ではなかったが、あちらも連れは居ない様子。
暇だし何となく声をかけてみた。

「Nさんだよね。覚えてる?」

「あ、この前会った・・・Tの友達のKちゃん?だっけ?」

「そうそうKだよ、こんなところで偶然。ごめん引きとめて」

数日後。
小腹がすいた折、コンビニに行くと、Nが惣菜パンを物色していた。
声をかける前に、あちらも気付いてくれた。

「ハハ、なんか縁が出来たんかなw」

またある日、帰宅前に立ち寄った弁当屋でカレーを注文し、完成するのを待っていたら、Nが入ってきた。

「!?wいようN!」

「おおおw」

「Kなに頼んだ?」と聞かれて「カレー!」。

「じゃ俺は特のりタル!」とN。

「そこは運命感じるゥ~とか言って一緒のカレーにすべきだろ!」

あるときは早朝のレンタルチェーン店で。

「おはようw」

「うわっ!びっくりした!」

あるときは、道路を挟んで信号待ちをしているNと視線が交差。

「あれっ」
「よく会うなw」

さらに数時間後、約10km離れた駅前の百貨店の中で。

「ちょK、またお前かっ!」

「おうワシじゃ、出迎えご苦労!w」

度重なる偶然に、失礼な発言もかわせる程度には打ち解けていた。

「誓って言うけど、Nをストーキングしてる訳じゃないよ・・・?」

「分かっとる、お互い逆方向から歩いてきたしw」

じゃあね、と言葉をかわして手を振って別れたが、数十分後にエレベーターの上りと下りですれ違った。

その夏の終わり、数十万人規模の群衆がwktkしている花火大会の雑踏の中、ビールとジャンボ焼き鳥を両手に楽しんでいるNに出会った。

「お、来てたんだー」

「芝生広場から花火見ようと思って移動してきたとこ」

「なんか会っちゃうのは何でだぜ?」

「んー、お互い顔が濃味だから見つけちゃうのかね?」

いやいやいや、おかしいだろ。
ほんの2か月かそこらで、こんなに何度も特定の人物とバッタリ会うかな。
行きつけの店でなら分かるが、出会った場所はばらばら。
もしかして、冗談じゃなくNにストーカーされている?
だが、それはおそらくNにメリットが無い。

その日はタクシーを拾おうとして、幹線道路沿いに立っていた。
近づいてくるタクシーに挙手して合図を出し、ああ乗車中だったと気付いてガッカリ、腕をおろした。
しかし、数メートル手前で降車のためその車が停まった。
よっしゃ、と歩み寄りながら「あ、もしかして・・・」。
降車してきた客は、もう当然のように、やっぱりNだった。

さすがに怖くなった。

車を降りたNもこちらに気付き、目を見開いて驚いた顔をし、けれど言葉は交わさずに苦笑いしながら去って行った。

それでNとはそれきりになった。
もう十年以上も前の話。
共通の友人Tとも疎遠になり、その後のNのことは分からない。
すごい勢いで偶然でくわしたが、友人の知人以上の発展はなかった。

N自身にも特に思い入れはなかった。
Nは元気でやっとるかなと懐かしんでいる今このとき、
あちらも同じことを思っているかも知れないし、そうではないかも知れない。

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