チェーンメールの怪

カテゴリー「不思議体験」

高校2年の夏休みに体験した話

頭の悪かった俺は学校に呼び出され、10人ほどの同級生たちと退屈な補講授業を受けていた。
確か古文だったと思う。
校庭では野球部が来年の甲子園目指して彼らなりの無駄な努力を行っていた。

午後のまどろみ。
始まって15分くらいで何人かはもう居眠りを始めていた。
嘱託の爺さん先生の講義が眠気を大いに誘った。
さすがの俺も耐え切れずうつらうつらし始めたときだった。

いきなり、窓際の一番うしろの机で眠っていたコギャルのY子が「はああああ!!」っていう変な悲鳴を上げて起き上がった。
そしてそのまま「うあああああ」と叫びながら立ち上がり、椅子を蹴飛ばし教室から飛び出して行ってしまった。

一同、しばらく沈黙。
そして、何人かが騒ぎ始めた。

Y子は格好はコギャルだが、いきなり意味不明な奇行をするような変人ではなく、素は大人しい普通の女子高生だった。
相当おかしな夢を見たのだろうか、それとも暑さで脳がやられたのか。

すると突然、今度はY子の前の席に座っていたA子が「ヒイ!」と悲鳴を上げたのだ。
またかよ、って感じでみんなが騒ぎ始めた。
A子は半泣きになりながら、誰かに肩を叩かれたと言った。
だが、背後には誰もいないし、隣の席にも誰も座っていなかった。

実を言うとA子は当時俺と付き合っていた。
しかし、おかしな虚言癖とかがあるような奴じゃなかったし、泣きながら訴えていたので、俺には嘘には思えなかった。
他の生徒たちもA子のことをよくわかっていたので、気味が悪いと大騒ぎになった。
とりあえずY子の席の周辺からはみんな離れて座り、A子も席を移った。

そしてふたたび授業再開。
しかしみんなY子の席が気になって仕方ないらしく、ちょろちょろうしろを振り向いていた。
爺さん先生の講義は相変わらず退屈だが、さすがに居眠りをする奴はいない。

その時、突然!携帯の振動音が鳴った。
Y子の机の中からだった。

再び教室中が沈黙した・・・。

メールだったらしく、バイブはすぐに切れた。

沈黙が続いた・・・。
先生までもが黙ったままだった・・・。

Y子と仲の良いB子がおもむろにY子の席まで行き、机の中から携帯を取り出した。
誰かが「やめなさいよ~」と言った。

B子はじっと画面を見ていた。
そのとき、「すいませんでした」と言いながらY子が戻ってきた。

厚化粧のせいで分かりづらいが、何かに怯えているような顔だった。
帰ってきたは良いが、入り口に立ち尽くしたままなかなか席へ戻ろうとしない。
すると「駄目だよ戻ってきちゃ。」と、B子は慌てる様に言ってY子の手を取り、教室を出て行った。

同時に「パン!」と大きな音がした。
見ると、窓ガラスが割れ、野球の硬球が飛び込んできていた。

ボールはY子の席を直撃し、砕けたガラスがその辺りに散乱した。

ビビって他の女子が泣き始めた。
けが人は居なかった。

先生は「もうやってらんねえ」みたいな顔で授業を切り上げ、出て行ってしまった。
なんだか腹が立ってきたので、俺は校庭に向かって大声で「馬鹿野郎」と怒鳴りつけた。

そしてイライラしたままB子が机の上に置きっぱなしにしていったY子の携帯を手にして、画面を見てやった。

メールはこう記されていた。

「その席に座ってると○○が来るよ」

学校内で流行っていた一種のチェーンメールだった。
おかしなことに差出人のアドレスがY子自身だった。

チェーンメールって殆どイラズラかと思ってたけど、中にはヤバイやつがあるっぽいね。

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