糸と友人(後編)

カテゴリー「不思議体験」

※このお話には【糸と友人(前編)】があります。

そこで急に、向こう側に行っていた私達の友人の一人が、B君の背中に指をさしながら、「おい、いかんほうがいいんじゃないのか」と言いだしました。
彼らは振り向きながら、何があるのかとB君の背中を覗き込みます。
言った友人は、私や兄、一緒に行った友人の背中を、次々と覗き込みます。
私達は何があるのかと、兄や友人の背中を交互に見てみますが、別に何もありません。

しかし、他校の友人達は、「うわぁ、な、なんだ?」とか、「ひー」と腰を下ろしだし、B君は自分の背中を見ようと、首を後ろに向けたのですが、見えるはずもなく、クルクルとその場で回り始めました。
彼は「何?何なの?」と、友人達に泣きそうな顔で聞いており、私達は、その場で足踏みをしている彼の背中を凝視しました。

まずは私が小さな悲鳴をあげて腰を落とし、友人もそれに続き、兄だけは、声は出したものの、ソレを掴もうとB君に近づきました。
私と友人は兄を止めて、B君に服を脱いで見るように言いました。

B君は急いで上着を脱いで、地面に叩きつけるように置きました。
すると上着の背中に、蠢く小さな虫のような、糸のような何かを見つけました。
それはさっき私たちが見た、上から垂れてきた糸と同じような、それを縮小したような物で、糸の先にヒラヒラと小さな旗がついていました。

それはクネクネ、ウネウネと蠢いて、シャクトリムシの様な虫にしか見えないのですが、旗が膨張したり、平ぺったくなったりを繰り返しており、膨張したときにA君の顔に見えるのです。

一瞬旗に戻り、一瞬A君の顔になる。
体は糸ノママ、ウネウネとしたまま。
それがB君の上着にくっついていたのです。

B君はあろうことか、「うわぁー」とその糸を靴で踏み潰して、蹴りながら服から除けようとしました。
何度も何度もソレを踏み潰してるうちに、膨張した時のA君の顔が潰れて、旗の状態にもどらない代わりに、平ぺったくなりました。

それでもウネウネと動き続けていました・・・。

私達は呆然とそれを見ています。
B君以外は何をどうするべきなのかわからないから、いつの間にかB君は笑ってました。
必死な顔が、ニヤニヤしてるように見えただけなのでしょうが、どうにも笑って見えるのです。
その行為を永遠に続けるのでは無いか?と思えるぐらいに、何度も何度も糸を、虫を、A君に見えてしまうソレを、踏み潰しては蹴りあげて、除けようとしていました。

数分後に、その糸が服についてないことに気づいたB君の友人が、B君を止めて、服を拾い上げて、確かめた後に地面を見回すのですが、近場にはいくら探しても、糸は落ちていませんでした。

その後、彼らは山の穴に近づくことを諦め、川でB君の服を洗っていました。
私達はどうするでもなく、ただ呆然と傍らに座ってそれを見てました。
彼らは怖さでなのか、又はA君を探せないことへの心苦しさからなのか、涙を流しながら川で服を洗っていました。

A君は、夕方4時になっても5時になっても、帰ってきません。
他校の生徒の一人がその間、学校から先生を一人連れてきました。
その先生に今までの事を全て話しましたが、私達の言うことをウンウンと聞いたあとに、兄に私達の学校の先生を呼んでくるように言いました。

その後、私達の先生に事情を説明しました。
同じようにウンウンと聞いた後、他校の先生と何事か話し合い、私達にとりあえず帰るようと指示し、一人の先生は学校に戻っていきました。
多分、応援というか、他の先生を呼びに行ったのでしょう。

夜に先生から電話があり、翌日に学校に来るように言われました。
親も色々と先生から話を聞き、一緒に明日学校に行くから今日は寝なさいと、私と兄に厳しい顔で言いました。

翌日、学校に私達と友人、親達が呼ばれており、これから他校に行くとの事で、みんなで他校に向かいました。
他校ではB君を始め、昨日遊んだ友人とその親が集まってました。
それから、他校の先生が口を開きました。

「A君が昨日亡くなりました。事故だと思います。詳細は親御さんに伝えますので、生徒の皆さんはこちらへ」と、職員室を指差しました。

私は涙が止まりませんでしたが、母は私と兄の頭をグッと押した後に引き寄せて、「しっかりしなさい。先生に何があったかをちゃんと言っときなさい」と、送り出しました。

職員室では昨日あった事を伝えたのですが、先生達は信じているのかいないのか、何度も何度も同じ事を聞いてきます。
「A君をいじめたんじゃないんだな?A君に何もしてないんだな?」と・・・。

私達は『いじめ』の言葉が出てくるとは思いませんでしたので、何度も説明を繰り返しました。
先生達は最後に「わかった」と言い、親が来るまでは、ゆっくりと泣きじゃくる私達を宥めていました。

家に戻ってから、先生に言ったことと同じことを親にも言いました。
それと、何故いじめと思われたのかを聞きました。
それは知らなくて良いとの事で、母は私達に嘘をつきました。

「A君が死んだのが川だったから、落ちたのか落とされたのかわからなかったんだって」と。

私達を心配しての事だったのでしょう。

その後、親に連れられて、みんなでA君の葬儀に行きました。
棺の中を見ることは出来ませんでしたが、A君の母親は私達に憎しみを持っているかのように、「よく来れたわね!顔をよく出せたわね!」と、皆の顔を憎々しげに見て、それぞれの両親にも毒を吐いてました。

A君の父親がそれを制して頭を下げたので、私達も頭を下げ、親は謝りながら帰っていきました。

さて、何故、私達がこれほどまでに彼の母親に憎まれたのか。
何故、親が嘘を言ったとわかったのか。
何故、先生が私達にいじめじゃないのか?と言ったのか。
すぐに答えはわかりました。
それはA君の死因でした。

事件はローカルニュースで何度か取り上げられたのです。
彼の母親が、マスコミにでも駆けつけたのでしょうか。
『小学生死亡、イジメが原因か?』というような見出しで。

A君の学校の生徒に、「A君はいじめられてたの?」とインタビューするシーンが、TVで何度も報道されました。
もちろん、誰一人虐められてたと言う人は居ませんでしたが・・・。

ニュースでは、A君の死因は撲殺されていたそうです。
顔がぺしゃんこになってしまっていたそうです・・・。
そのころには、イジメどうのこうのでは無く、不自然な死因という感じで取り上げるようになっていました。

警察は事件・事故の両面で調べているいるとの事だったので、不思議な死因を殊更に取り上げていたのかもしれません。
誰かに何度も何度も踏まれたかのように・・・。

何度も何度も地面に擦り付けられたかのようにA君は顔が潰れていたのだと。
これを親は、一切私達に伝えていませんでした。
伝えられなかったのでしょう。

数日後の登校日に全校集会で、「その公園の奥には近づかないように」と、何度も校長先生や担任が言いました。
犯人がいるとするならば、未だ捕まってないからです。

それから十数年が経ち、私達は何故かその話を頭から消していました。
まったく覚えていなかったと言う訳ではなくて、思い出したくなかったのです。
後々の警察発表では、事故ということになってました。
思い出したのはなぜかというと、私と兄と、当時は友人だった兄の彼女が、3人一緒にA君を見たのです。

兄と友人は、中学卒業後から付き合いはじめました。
私達はそれ以降も、3人でよく遊んでいました。

大学生になった私達はある日、3人で買い物に向かっていました。
高速道路で都会のある町へ向かう途中、事故があった為、渋滞。
私達はインターを入ったばかりで戻ることも出来ず、ただ車が流れるのを待つばかり。

少し進むと、前の方に車が横転しているのが見えました。
山の穴のある位置の、ちょうど上にあたる場所で、車からはウネウネと糸が出てきていました。
クネクネと、横転した車の窓から出てきているのです。
旗はヒラヒラ揺れてました。
私は兄と友人を見たのですが、二人とも唖然としていました。

車が少しづつ進み、事故現場の横を通ります。
前の車に乗っている子供が、ウネウネしている糸を指さしています。
私達はクネクネしている糸を見ないようにしていましたが、その子供の車の窓の横に白い糸が降りてきています。
子供は親に何か言ってるようですが、前に座ってる彼の両親は、何も見えてないのか振り向きません。

旗は膨張してきだし、目を背けたかったのですが、どうしても無理でした。
金縛りのような状態なのです。

すると・・・膨張した旗が、A君の顔になってきました。

「ヒッ」と悲鳴をあげてしまい、兄を見ます。
兄も真っ青になりながら、車を少し進めました。

そのとき都合悪く、CDを掛けていたのですが音が急に飛び始めたのです。
同じ音をずっと繰り返します。
「ギャーギャー、ギャーギャー。ナ、ナ、ナナナンデ、ナナナンデ」と聞こえた気が。

前の車が流れ始めて、私達も事故現場を通り過ぎようと少し車のスピードを上げました。
A君の顔をした糸は、旗に戻ったりしながら、クネクネと揺れながら、助手席の窓の横を、逆立ちのよう状態でこちらを見ています。
CDは飛び飛びで、あまりの恐怖から「ナンデ、ボクガ」と聞こえてしまい、心臓が飛び出しそうになり、兄は震えながらも車を運転し、加速をつけてそこから逃げ出しました。

私は真横にいたクネクネしたものを視界の横に捉えつつ、悲鳴が出そうな口を押さえて、真っ直ぐに前を見続けます。
視界の端では、糸の下についてるA君の顔が、旗に戻るように平ぺったくなりだし、真っ赤になりながら、萎んでいく様を捉えていました。

通り過ぎたものの、怖さから運転も儘ならず、そのまま高速を降りて、近くにある魔よけで有名な神社に向かい、御払いをしてもらうことになりました。

それ以降、私達は糸を見たことは無いのですが、あの糸は何だったのかと今でも不思議です。
ロープぐらいの太さなのですが、糸としか思えないで糸と言ってます。
あれは死んだ人の魂なのか、それとも何か別のモノなのか。
未だに理解ができません。

その高速道路を通る事は、それ以降ありません。
そこは未だに事故が多い場所で、その糸のせいなのか、もしくは山の穴が何か関係するのか。

結局結論はわからずじまいですが、原因も山の穴に何かあるのか、その場所にあるのか等も一切わからないままですが、これ以上の体験はありません。

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