行かんほうがええ

カテゴリー「不思議体験」

俺が中学生2か3年の時の話。

その日の夜は、悪友のオウちゃん(更生済み)達と四人で、近くの廃屋で肝試しをしようと約束をしてました。(当時から俺はその悪友達とつるんで、タバコ吸ったり軽い窃盗をしたりしてた。此処で言う”DQN”)

オウちゃんに言われた通り、懐中電灯を一つ、マイルドセブンも一つ(笑)ポケットに突っ込んで、深夜11時頃、家族に気付かれないように、電気もつけずそっと玄関から出ようとした時、「マサ」とすぐ耳元で声がして、ビビッて後ろを振り向くと、俺のじいちゃんが立っていた。

しばらく硬直していると、じいちゃんが口を開けた。

じいちゃん:「お前、行かんほうがええど」

俺:「・・・え?」

行かんほうがええ、と言われましたが、じいちゃんは勿論この家の者に、俺が今から何処に行くかなんて教えてません。

じいちゃんは、「もう行く前から目ェつけられとる。行くな」と言う。

わおぉ・・・・・・その台詞を聞いて一気に心拍数が上がる俺。

俺:「う、うそやん・・・てかじいちゃん、俺が何処行くか知っとるん?」

「分からん。でも想像はつく」と、基地外じいさんは抜かしやがる。

そう言われても約束は約束です。
先祖が霊媒師(?)なせいか、少なからず俺には霊感??みたいなのは・・・多分ある。(だから肝試しに呼ばれたってのもある)

急に行かないと言うと後々が面倒なので、その場で渋っていると、玄関の黒電話が鳴り出しました。
慌てて俺が電話に出ると、相手はオウちゃん。
近くの公衆電話からかけてるとの事。(1●年前なんで、ケータイは持ってません)

オウちゃん:『マサヤぁ~、まだ家におるんか?はよ来いやぁ』

オウちゃんは少しイラついてるみたいでした。

俺:「ごめんごめん、ちょっと足止め食らって。すぐ行くけえ待っとってや」

と、横に居るじいちゃんを見ると、ニヤニヤと気色悪く笑っている・・・こういう時の嫌な予感は的中するもんです。
確実にじいちゃんは、何か感じていらっしゃる様子。

不安になって、もう一度オウちゃんの名前を呼びました。

俺:「オウちゃん?」

オウちゃん:『・・・・・・・・・』

俺:「オウちゃん??今どこ?」

オウちゃん:『・・・・・・・・・』

えっ無言ですか、むしろ放置プレイですかっ!?
一瞬、俺を怖がらせる演出なんて考えたんですが、いくら呼びかけても、相手はうんともすんとも言いません。
いい加減気持ち悪くなってきて、俺は電話を切りました。
すると横に居たじいちゃんが、「お呼びがかかった」と言いながら踵を返し、闇の中へと消えていった。

目ェつけられとるて、俺なんかしたっっ?
まだ訪れた事のない場所で、その上そんな因縁をつけられるなんて、ただのいい迷惑です。
まぁ行こうとしてるのが悪いのですが・・・。

一気に恐怖が押し寄せてきて、電話の前に立ち尽くしていると、また「ジリリリィィン!!」とベルが鳴りました。

恐る恐る電話に出ると、また無言。
言っておくが、一緒に行く友達は俺にそんなフザケたマネなんかしない。(と思ってる)
というか、オウちゃんは地元で有名な悪で、キレたら手がつけられませんという位恐ろしく、そんな彼に、X(エックス)を崇拝しているという点で気に入られてた俺に、悪戯なんてする奴は居なかった。

電話の向こうからうめき声が聞こえるとかじゃなくて、本当に無音。
サーーっという音も全く聞こえてこない。
全身の毛穴が開くようにゾワッとして、また電話を切った。

また電話が鳴った。
俺は電話に出ず、すぐに受話器を叩き付けた。

また電話が鳴る。
叩きつける。
また鳴る。
叩きつける・・・の繰り返し。

キチガイみたいに鳴り続ける電話さん。
いよいよ怖くなってきた俺は電話線をぶち抜き、自分の部屋に猛ダッシュ。
チキンな俺はそんなもんを目の当たりにして眠れる訳がなく、布団に包まりながら朝を迎えた。

次の日、肝試しに行けなかったことを謝りに、オウちゃんの家に行った。
不思議なことにオウちゃんは怒ることなく、快く出迎えてくれました。

俺:「ごめんなオウちゃん、昨日色々あって肝試し行けんかったわ・・・」

気まずそうに俺が言うと、オウちゃんは俺の肩をポンと叩いた。

オウちゃん:「いや、謝らんでエエよ。てか、お前本当に昨日来とらんかったよな?」

俺:「は?」

質問の意味がワカリマセンがな、と考えてたら、オウちゃんが昨日のことを話してくれました。

あの夜オウちゃん達は、廃屋の前で俺を待っていたそうです。
痺れを切らしたオウちゃん達は、先に中に入ろうと言い出し、予備の懐中電灯で辺りを照らすと、すぐ後ろに俺が立ったそうな。

みんな「お前ェ~ビビらせんなやっ!!」とか言ってたんだが、すぐ気付いたらしい。
俺なんだけど、俺じゃない。

なんとも言えないんだが、「絶対違った」という。
とゆうか別人。

偽者の俺は「ごめんごめん」といいながら笑っている。(その笑い方が怖かったらしい)

偽俺が「じゃあ、いこーぜ」と廃屋に入るよう促した瞬間、全員が一目散に逃げたそうです。

その後すぐに俺の家に電話したが、俺が電話線を抜いた後だったので、電話がつながらなかった。
この時オウちゃんは、俺が死んだ!!と思ったそうです。

勿論、オウちゃん達が電話をかけたのはこの一回だけ。

「何度も電話をかけた覚えはない」との事でした。

オウちゃんは終始笑いながら、「いい経験させてもらったわ」と話していたが、もしもあの時じいちゃんが止めなかったら・・・と思うと、俺は全然笑えなかった。

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