四つん這いで山の中に

カテゴリー「不思議体験」

去年家族旅行で銀山温泉を見に行った帰り。
登録しておいた山形駅のビジネスホテルへナビをセット。
銀山に行く時もホテルから直行したから、その道を戻るハズなんだけど、夜の山道、どうにも来た道と違うルートを誘導してる。
一度車を止めてナビ設定を見直しても、幹線道路優先になってる。

近道かもしれん、と一先ずナビに従って山道を進むと、早々に街灯が無くなって、道が細くなって、ガードレールが無くなって。

ついには舗装が無くなった・・・。

Uターンするスペースも無いから進むしかなく、低速で1kmくらい進むと、空き地に出た。

たぶん林業の作業場か何かなんだと思う。
簡素な小屋と入り口の高い倉庫っぽいのが見えた。

さすがにコレはナビの故障だろう、と思い再検索する為、車を止めようとした時「ドォーーーーン」と大きな音と車を揺らす振動がした。

なんだ、なんだ!!?と、俺と親父が車の外に出て辺りを見回すけど、車に何かが当たったワケでもなく、落石や倒木があるようでもない。
百歩譲って聞き間違いはあっても、振動まで勘違いはありえない。

暗くて分からないけど、山の奥で何らかの崩落でもあったんだろう・・・と車に戻ろうとしたとき、車中にいた母と姉が絶叫を上げた。

ヘッドライトの逆光で見難かったけど車の周りに誰かがいる。
最初は「熊か?」と思ったけど、背格好から人だと分かった。

親父が落ちてた枝木を持って「なんだお前ら」と近付いていくと、それに気付いた人影が、散り散りに山の中へ消えて行った。
俺と親父は「ヒィッ」っと悲鳴を上げて、大急ぎで車に乗って一目散に来た道を戻った。

ルート履歴を辿ってどうにか幹線道路のファミレスに寄ることができた。
そのままホテルに行くこともできたけど、うまく表現できないが、落ち着くまで明るくて人の多いところに居たかった。

ホテルには親父が適当な理由をつけて今夜は行けない事を連絡。
連泊だったせいか、この日のキャンセル料は無かったらしい。

母と姉は何も話そうとしないから、何で絶叫を上げたのか今でも分からない。
俺と親父は、あの人影が四つん這いでカサカサと山の中に逃げて行ったのを見た。

幽霊を見た怖さというより、生理的に気持ち悪い昆虫を見たときの怖さに近い感じ。

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